千夜千食

第145夜   2014年11月吉日

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天神橋商店街「お好み焼 双月」

人生できっといちばんここのを食べているけれど、
大阪のお好み焼のなかでは、ダンゼン私のナンバーワン。
自分で焼く人が多いけど、私はいつも焼いてもらうのだ。

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 前にも書いたと思うけど、うどん県の生まれなのであまりお好み焼を食べていない。子供の頃はなぜか親から禁じられていたので、お好み焼きをちゃんと食べるようになったのは大学生になってからである。幼少時の舌の記憶にないので、私にとってお好み焼きはソウルフードとは言えない。それが、大阪で長年仕事している身としては、ちょっと悲しくはある。とはいえ、関西に住んでいるといたるところに気軽なお好み焼屋があるので、大人になってからはまあそう頻繁でないにしても、まったく行かないわけではない。(クドい言い訳だな・・・)

 この店は、会社のすぐ近所にある天神橋商店街の中にあり、残業する時ちょくちょく出かける店である。天神橋商店街とは、大阪天満宮から北にまっすぐ伸びる日本一長い商店街で、アーケードのない部分も入れるとその長さは2.6キロに及ぶ。少し前まではお好み焼き屋とリーズナブル鮨屋の激戦区としてつとに知られていたのだが、昨今の韓国系とチャイニーズ系の進出の激しいことと言ったらちょっとない。ラーメン屋もずいぶん増えている。その移り変わりの激しいエリアで、昭和48年の創業以来、しっかとした立ち位置を確保している老舗である。店があるのは、長い商店街のちょうどど真ん中3丁目。赤い看板と提灯が目印である。

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 ガラリと引き戸を開けると、中はテーブルごとに仕切られていて、それぞれにのれんまでかかってる。入り口から眺めると、まるで屋形船がズラリと並んでいるようにさえ見え、なんだか無性にウキウキしてくるのだ。このしつらえ、本当に楽しい。そう、ここでお好み焼きを食べるのは、私にとってはファンキーなエンターテインメントなのである。

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 今回はずいぶん久しぶりである。ここは冬になるとかきを使ったお好み焼きもあるので、迷わずそれにする。かきのデラックス焼き。ふっふ。かきはもちろんだが、牛肉に豚肉、海老、イカまで入った超ゴージャスな一品である。おまけに卵は2個入っている。2個も!一緒に行った連れは基本中の基本豚玉である。お好み焼きは豚玉に決まっとる、それ以外はありえんといつも言う。(余談であるが、お好み焼きにうるさい天皇バーのマスターも、お好み焼き(スジ焼き以外)は豚玉以外は邪道であるという。なんでもかんでもお好み焼きに入れるのは素人のすることらしい・・。いいよ、私はシロウトだもん・・・)

 大阪人は自分で焼く人が多いのだが、ここではお店の人に焼いてもらう。だって、プロに焼いてもらう方がおいしいに決まってる。そもそも、飲食店で、客が自分でお好み焼いて喜んでお金払ってるってお好み焼きぐらいではないか。実におかしい。可笑しい。うどんのセルフとは意味が違うだろう。

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 ここで焼いてと頼むとまずは牛肉や豚肉を鉄板で軽く焼く。その間に他の具材を混ぜ混ぜし鉄板の上に流したら、その上に軽く焼いておいた牛&豚を乗せる。これで底がしっかり焼けるまで約5分少々。底がいい具合になったのを見計らい、ひっくり返して肉サイドを焼く。これで約5分。再びひっくり返して完成である。そしてまずはマヨネーズをたっぷり塗って、その上から辛いタレ、次に甘いタレ。青のりにかつおぶしを乗せたら出来上がりである。

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 具材を混ぜ混ぜする典型的な大阪のお好み焼きであるが、卵がたっぷり入っているので生地のサクサク感に卵の風味とねっとり感が加わって、こたえられない美味しさである。たぶん粉に秘密があると思う。山芋も混ぜてはいると思うが、どうしたらこんなに軽くサクッとした生地になるのだろう。働いているお兄さんに聞いてみても、わからないという。彼もよくは知らないのである。もちろん企業秘密であろうが、その配合を知りたいものである。