千夜千食

第253夜   2015年6月吉日

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五反田「グリルエフ」

仕事で滞在することの多い五反田界隈をウロウロしていて
路地の角に佇むいい感じの洋食屋さんを発見した。
ここ、知る人ぞ知る、いやかなりの有名店らしいのよ。

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 撮影の仕事のときは五反田のビジネスホテルに泊まる。商品のサンプルルームが五反田にあるので、打ち合わせに便利なだけでなく、ロケバスが停まりやすい場所でもあるので、いつの頃からかここになった。私は長くてもせいぜい4日とか5日程度だが、社員によったら一週間から10日ほど滞在ということもあるので、みんな口を揃えてこのホテルがいいと言う。なんで?と聞けば、洗濯乾燥機が部屋についているから、なのだそうだ。うん、確かに夏場の撮影だと、ドロドロに汗をかくし、その日のうちに洗って乾かせられれば、快適に違いない。持って行く着替えだって少なくて済む。ミニキッチンと電子レンジもついているので、ちょっとした食事をつくることもできる。こういうのが現場の声なのだ。

 撮影スタッフはみんな私たちが五反田に泊まっているのを知っているので驚かないが、仕事以外の知り合いに五反田に泊まっているというとけっこうびっくりされる。五反田というファンキーな土地柄のせいなんだろう。たしかに、ホテルのすぐ横に歓楽街があり、客引きの数だって半端じゃない。最初は、うっ、と引いたりしたが、ウロウロしているうちに、飲食店は充実しているし、コンビニも薬局も足裏マッサージも隣にあって深夜まで開いているし、お気に入りのバーも見つけたし、滞在するのにこれほど便利な場所もないのでは、と思うようになった。

 会食の予定がないある日の夕方、今夜はどこで食事しようかと歩いていると、クランクのようになった路地があり、ふらふらと入ってみれば、古色蒼然とした店の看板が目に入った。外から窺うに、どうやら洋食屋であるようだ。こういうときは、勘が働く。絶対に間違いのない佇まい。看板をしばし眺め、意を決してドアを開ける。おお。中もええ感じ。昔から、頑に洋食を作り続けている店の匂いがぷんぷんする。

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 カウンターに案内され、何にしようかとメニューを開けば、美味しそうなものがズラリ。けっこうな品数である。おもいっきり迷うが、初めてであるので、オーソドックスにポタージュスープとチキンサラダ、メインにビーフカツを注文した。大正解!であった。どの料理も、丁寧に誠実につくっていることのわかるしっかりした味で、そんな姿勢でつくるものがまずいわけはないのである。こちらの名物はハヤシライスであるらしく、一人客で常連らしき人たちのほとんどが注文していた。よし、次回はあれを注文するぞ。

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 ハヤシライスにつられ、日をおかず再訪した。もちろん、迷わず注文する。玉ねぎと牛肉、マッシュルーム、それにグリーンピース。さらさらのソース。これが昔ながらの鈍く光る銀色のソースポットにあふれんばかりに入っているのだ。うやうやしく白ごはんの上にかけて、いただく。旨い。じんわりと肉のうまみがソースにとけ込んでいて、玉ねぎの甘みがまたいい塩梅。これは、ランチにもよさそうだ。

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 さらに、気になるメニューでカニクリームコロッケというのがあったので、また後日注文してみたが、この先がきゅっと桃のように尖ったカタチが何とも愛らしく、だけどコロッケの味わいは絶妙とでも言うべき塩加減で、ソースも何にもなしで、これだけで美味しく食べられるようちゃんと計算されている。一人のときは、しばらくは、チキンサラダのミニとカニクリームコロッケ、ライス添えというのが定番になりそうである。