千夜千食

第91夜   2014年6月吉日

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えび千両ちらし

えっ、えっ、こんなお弁当があったの?
東北新幹線サイドでしか売っていない
ゴージャスかつ太っ腹弁当。もう一目惚れです。

 本日は東北新幹線に乗る。東京駅の東北新幹線コーナーなどそう頻繁にはいかないので珍しくてしかたがない。弁当売り場を物色していたら、「えび千両ちらし」というのを発見した。値段も駅弁にしては少しだけ高め。これは・・・旨いに違いない・・・なんだか、ピンとくるのである。

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 動き出した新幹線で朝昼兼用の食事とする。わくわくしながら弁当を手に取る。えび千両ちらしと書かれたカードのイラストがシブイですな。ひっくり返すとこれ、そのままハガキとして使えるようになっている。心憎い心配りである。そしておしながきまでついている。

すし飯・・・・・新潟米の精進合わせ
うなぎ・・・・・蒲焼きのたれ仕込み
こはだ・・・・・薄切り〆、わさび醤油からめ
蒸し海老・・・・酢通し醤油からめ
いか・・・・・・塩いかの一夜干し
厚焼きたまご・・出汁入り
海老・・・・・・むき海老のおぼろ
ガリ・・・・・・甘酢漬け

 どうです。この堂々たる書きっぷり。丹精こめて、真心こめて、ちゃんと作っているという自信にあふれている。フタを開けると、見るからに美味しそうな厚焼きたまごがびっしりと敷き詰められている。真ん中にはピンク色のむき海老のおぼろ。この色のコントラストだけで、すでにファーストインプレッションは満点である。

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 玉子をどけて中をのぞくと、うなぎ、こはだ、蒸し海老、塩いかがゴロゴロ。わあお!WOW!と心の中で歓声を上げる。うなぎは蒲焼き、しっかり弾力があって、たれも甘辛の具合がちょうどよい。こはだも〆た後にわさび醤油をからめており、これもなかなかいけるのだ。酒がないのがとても残念である。エビもいかも、それぞれ醤油味、塩味で、4つの具材ごとに味が違って飽きさせない。すし飯の上にはおぼろ昆布が敷かれている。新潟米の精進合わせというのは、クルミやかんぴょうが入っているからか。新潟は米どころ、あえて品種は書いていないが、たぶんコシヒカリであろう。素材のよさを最大に活かした上品な薄味。これは、鮨好きにも、駅弁ファンにも、いやそもそも弁当としても群を抜く旨さ。こたえられない、たまらない。

 「千両ちらし」というネーミングも秀逸である。うなぎ、こはだ、えび、いか、玉子。鮨ネタの千両役者がそろったこの顔見世弁当。新潟の新発田三新軒というところが作っていて、東京駅では東北新幹線の入り口の売り場でしか販売されておらず、販売時間も決まっている。たしか、夕方4時とか5時までだったか。品川駅を利用することが多いのと、東京駅を使ったとしてもなかなか夕方4時頃に来れないので、食べたのはこれ一回である。そのせいもあって、今やアタマの中で「えび千両ちらし」は神格化され、妄想も手伝ってどんどん肥大化している。ああ、もう一度食べたい。