千夜千食

第98夜   2014年6月吉日

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白金「アトリエ・ド・アイ」

ニソワーズとクスクスロワイヤル。
この二品だけでも食べに来る値打ちがある。
ワインの品揃えにも奥行きがあるフレンチビストロ。

 ここは昔「シェトモ」というフレンチだった。野菜を少しずつプレートに乗せたプレゼンテーションが当時としては革新的で、そのうえプリフィクスメニューの値段が驚異的にリーズナブルだった。店のある白金界隈でいつもうろうろしているので、ある日思い出し電話してみた。すると、名前が「アトリエ・ド・アイ」になっているではないか。

 店自体の経営は変わっていない。名前を変え、サービスのスタイルをアラカルト形式にしたのと深夜2時過ぎまで営業するようになったのだという。いいではないか。何度か訪れるうちに、ニソワーズとクスクスのファンになってしまった。ニソワーズは野菜をあまり積極的に摂らない私が唯二注文するサラダのひとつである。(もうひとつはシーザーズサラダである)

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 ニソワーズ。それはニース風サラダのこと。トマト、オリーブ、ツナ、いんげん、じゃがいも、ゆで卵。そこへアンチョビにオリーブオイルを加えたソースで和えるというサラダで、ニューヨークの「バルサザール(上の写真)」でこの美味しさに目覚めた。野菜がゴロゴロ入ってい、このひと皿だけでおなかがいっぱいになるくらいのボリュームがあり、当然ツナはフレッシュを使っている。その味とボリュームに遜色がないくらい、「アトリエ・ド・アイ」のニソワーズもいけるのだ。こちらもツナは自家製。なので、これは外せないメニューになっている。半分にしてというオーダーも聞いてくれる。

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 もう一品のクスクスは、クスクスロワイヤルという(野菜だけでも作ってくれるらしい)。羊や豚、鶏肉のプロシェットに野菜がたっぷり。これにフォンドボーのスープがついてくるので、クスクスにじゃばじゃばかけていただく。アリッサソースで、自分でいろいろ味を調整できるのもうれしいのだ。(残念ながらクスクスの写真がない・・・)伺ったのは限りなく深夜に近い時間帯。ニソワーズのハーフ。牛肉のカルパッチョハーフ、クスクスをあきらめ、鴨肉のローストにした。と言いながらも、デザートは別腹である。最近、少し閉店時間が早くなったらしいので、行く機会がめっきり減ってしまったのだが、また久々に伺いたい。

 お気に入りの一品、名物の一品がある店というのは、しばらくご無沙汰していてもまた行かなきゃという気になる。「あの店のあれでなきゃ」と思わせられるかどうか。それが店のキャラクターや魅力ということなのだろうし、これは料理だけでなく仕事でも同じことだと思う。