千夜千食

第166夜   2014年12月吉日

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NY NoMad「Birch Coffee」

新しい時代の珈琲がアメリカから来るなんて
大昔のことを考えてみれば凄い皮肉である。
サードウェーブ系のここ、最近のお気に入りである。

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 大昔、アメリカで飲むコーヒーほど不味いものはなかった(笑)。アメリカンとはよく言ったもので香りのまったくない泥水のようなコーヒーは、はっきり言って飲めやしなかった。まともなコーヒーにありつこうと思ったら、わざわざイタリアンレストランに行かなければという時代があったのである。その後、90年代に仕事でオーストラリアに何度も通う時期があったのだが、シドニーのカフェではすでにカフェマキアートとかエスプレッソが普通にあり、これはなかなか洒落てるなと思っていた。そのうちニューヨークでも、オー・ボン・パンなるボストン系のカフェがちらほらと増え、そこではコマシなコーヒーが飲めた。そして気がつけばシアトル系の波がやってきて、スターバックスやタリーズなどが出現。アッという間に日本にも飛び火した。

 私も当初はスターバックスのコーヒーをよく飲んでいたが、日本で定着し始めるとあの独特のフレーバーとアメリカ的ストイックさの象徴のような禁煙にだんだん嫌気がさしてきた。そして、ある日ハッと覚醒するのである。日本では昔から喫茶文化があるじゃないか。豆のセレクトや焙煎方法にも店ごとにこだわりがある。そしてそういう店では、店主とのコミュニケーションが楽しめたり、オリジナルの豆が変えたり、煙草が吸えたりするのである。なんだ、もともとあったこっちの方がシアトル系よりずっと民度もクオリティも高いではないか。

 そうこうしているうちに、今度はサードウェイブと呼ばれるトレンドがやってきた。ポートランドやサンフランシスコ系の品質重視の波である。日本上陸したときのブルーボトルコーヒーの騒ぎは記憶に新しい。NYブルックリン系も話題になっている。だけど、今となっては、ご近所に本社のある萩原コーヒーとか京都のオオヤコーヒーとか、倉敷珈琲館のコーヒーとかの方がしっくりくるし、それが手に入らなければ別に昔からあるイノダコーヒーでもじゅうぶんと思うようになってきた。もっと言うと、今も各町内にある昔ながらの珈琲屋さんでもまったく問題がない。ネルドリップで淹れたり、水出しのダッチコーヒーだったり、パーコレーターを使ったりと、もともと、こっちの珈琲文化の方が多彩なのである。しかもほとんどの店が煙草を吸わせてくれる。珈琲でも日本再発見なのである。

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 ところが、滞在しているホテルの近所を歩いていてよさそうなコーヒー屋さんを発見した。それが「Birch Coffee」である。店の雰囲気や内装を見るだけで、きわめて小規模展開で豆の焙煎にはこだわっているであろうことは見て取れる。注文するときに名前を言うと、できあがったよと名前を呼んでくれるサービスも楽しい。奥には小さな本棚もあって、部分的にはライブラリーカフェっぽくもある。それに、なんだか、フレッシュジュースとかヘルシーなドリンクも売っている。夕方、カフェラテをテイクアウトして、今度は朝ごはんを食べに出かけた。卵とトマト、アボガドのトーストサンドイッチである。全粒粉のパンを軽くトーストして、本当にシンプルに挟んでいるだけだが、これがなかなかデリシャスなのだ。素直でストレートな素材の味がした。

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 ここのコーヒーは、マイルドだけど適度な酸味があって私の好みど真ん中。サンドイッチと一緒にラテを飲んで、さらにオリジナルロースターというのをテイクアウトした。豆そのものも欲しくなったので、Birch Brend とFrench Brendというのを二袋ほど日本に持って帰り、しばらくの間楽しんだ。これ、日本から個人輸入できないかなとサイトを見に行ったが対応してなくて、そもそもコーヒー豆の輸入はすごくややこしいらしいこともわかった。来年はもう少し大量に買って帰ろうと思う。