千夜千食

第206夜   2015年3月吉日

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六甲焼き鳥「よしおか」

飲食店不毛の地、阪急六甲駅前に
彗星のように久々に現れた焼き鳥屋さん。
さっそく、みんなで探検にでかける。

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 阪急六甲駅で降り、改札をまっすぐ出て二階通路をそのまま道なりに山側へ曲がってゆくと、ちょうど駅前の古くからあるビルの真ん前に出る。六段ほどある階段を降りた真正面には、実にさまざまな店が現れた。いちばん最近はたこ焼き屋さん、その前はたい焼き屋さんだった。花屋のこともあったし、不動産屋だったこともある。はて、その前はなんだったかはもう思い出せない。とにかく続かないのだ。阪急神戸線駅前の一等地であるのにもかかわらずだ。

 阪急六甲の山側は、六甲山系の鶴甲山(標高327メートルあった)の周囲を切り開き、30万平方メートルの宅地と30万平方メートルの公園や緑地帯をつくったことから発展した。高度経済成長期には鶴甲団地はサラリーマンの憧れだったようだが、今ではすっかり老朽化している。ただ神戸淡路大震災のときも阪急から上はほとんど家屋の倒壊もなく、鶴甲のへんは何事もなかったというから、地盤も含め街自体は成熟しているし、何と言っても六甲山のお膝元だから住環境も申し分ない。マンションもどんどん建設され住人も増えているし、神戸大学や松蔭女子大などの大学もある。だから、駅前の飲食店がもっと充実してもいいはずなのに、ほんとうに数えるほどしか店がないのである。

 震災で被害が甚大だったJR六甲道近辺(歩いて8分ほど)が再開発され、飲食店がかなり充実しているので、そちらで充分ということなのかもしれないが、そちらの賑わいとは対照的に阪急六甲界隈はいつも何となく寂しい・・・。

 ある日、またたこ焼き屋さんが消えたんだ・・・と切ない気持ちでいると、改装工事が始まった。外観に木をあしらい、内装にも時間をかけている。こりゃあ、和食系か。これだけこだわっているということはそれなりの店だな・・・いろいろ近隣で聞き込みをすると、どうやら焼き鳥の店らしいということがわかった。やがてオープンしたのだが、店が終わるのはけっこう早い。私が阪急六甲駅に降り立つ時間には、もう店じまいしているので流行っているのかどうか勝手がわからない。そのうち新しくできた焼き鳥はまあまあイケるという噂が伝わってきた。定休日は木曜なので、土日に行けるではないか。さっそく天皇バーの面々繰り出すことにした。

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 入るとカウンターがあり、奥には個室もあるようだ。出入り口が別の完全個室もあって、こちらは密談にももってこいの空間である。はじめてなので、カウンターに座る。食べたいものをまずはそれぞれが注文し、それを全員で1本ずつもらう。4人で行ったので、ズラリ並ぶと圧巻である。せせり、かわ、とりはらみ、こころ、ずり、ささみ、手羽・・・。こちらの焼き鳥はずっしり大きく、ボリュームがあって、食べごたえがある。たたきも、白肝も、ベーコン巻きも、ちゃんと旨い。今日は、焼き鳥を食べたい!という日にはうってつけの店である。それでいて、個人がやっているので、丁寧に仕事しているのがわかる。悪くない。いや、いいじゃないか。

 平日の夜の様子はあまりわからないが、土日の夜はなかなか予約が取りにくいと聞く。この雰囲気と味とボリュームなら、家族が日曜日に気軽に食事するのにもいいし、若いものどうしでちょっと一杯という場合でも入りやすいだろうし、奥のテーブルでグループでわいわいというのもよさそうだ。

 喫煙も可能ということで、4人のうち3人が食後に煙草を吸った。ほどなくして、完全禁煙になりましたという看板が表に出た。きっとあの日の私たちのせいである。煙草の煙と焼き鳥の煙は質が違う。申し訳ないことをした。

追記

 平成28年になってから、かしわの水炊きもメニューに加わった。水炊き(小鍋)1,800円。かしわ水炊きコース(お一人様)3,000円から。焼き鳥コース(お一人様)3,000円から。リーズナブルである。