千夜千食

第238夜   2015年5月吉日

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西麻布「レ・ビノム」

ジビエがおもいきり充実していて、
お値ごろなワインがいっぱいの充実ビストロ、
テーブル間の狭さがなかなかよいのである。

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 ここは10年くらい前にちょくちょく行った店である。料理人が変わったのか、経営が変わったのか、はたまたメニューのシステムが変わったのかはわからないけれど、少し前に行ったら様子が変わっていた。前は、もっと自由度があって、たしかワインは何を選んでも同一価格であったように思うが、それもかなり前の記憶である。とにかく、パリのビストロのような(5回くらいしか行ったことはないが)カジュアルかつ洗練された雰囲気がたまらなく心地よかった。

 季節になるとエゾシカとかイノシシとかを出すので、ひそかに「エゾシカ会」なるものを作り(一年しか機能しなかったが・・・)食べあさった年もあるし、イノシシのカレーに夢中になったこともある。たいていすぐ満席になり、おおいに賑わい、いつぞやは某高名料理評論家のお姿を拝見したこともあった。

 場所は西麻布交差点の近く。ちょっと一本裏手に入ったところにあるロケーションが隠れ家っぽくて、なかなかよろしい。しかも、テーブルとテーブルの間隔がくっつきすぎじゃない?と思うくらい狭いところもパリのビストロのような(5回くらいしか行ったことはないが)風情で、客同士の会話やグラスを合わせたり、ナイフやフォークが皿に当たる音が混じり合ったなんとも言えないさんざめきが日本離れしていたのであった。

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 今回の訪問はかなり久しぶりである。テーブルの間隔とか配置が微妙に変わっていることに気づく。お味の方はどうだろう。とりあえず、ワインはシャンパンでずーっと行くことにし、ルイ・ロデレールをボトルでお願いする。

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 ミネストローネを軽くいただいて、ツナサラダ。と言ってもこれは分厚いカツオを大胆にザクザク切ったものをソースで和えた一品である。魚好きにはこたえられない出し方だ。カツオ、ほとんど生状態である。鯛のポワレは、皮がこんがりパリパリ。皮をどのように処理するかで魚の味わいは格段に変わるし、皮もご馳走の一部なんだよなあと感心しながら美味しくいただく。付け合わせはアスパラソバージュ。アスパラと名前がついていはいるが、つくしが伸びたような形状をしており、茎の部分は心地よい歯触りとぬめりがあってなかなかうまい新種の野菜である。

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 メインは鴨とトリュフ。ありそうでない組み合わせかも、と思いながら鴨にかぶりつく。グリルした人参や牛蒡のシャクシャクした食感と、鴨の濃密な肉感とのギャップをトリュフの香りが巧みに繋いでくれるという感じ。ソースで食べない鴨、意外と好きかも。シメはホタルイカとトマトのカッペリーニ。お味は申し分ない。冷製パスタがそろそろ気持ちよくいただける季節になってきたな。

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 この日はデザートをパスして、もう一軒ハシゴした。連れてってもらったのは、天現寺交差点そばのワインバー。そう、あのケンゾーエステイト直営のバーである。バーと言っても、こちらではワインに合うちゃんとした食事も提供しているらしいのだが、なんと言っても普段ボトルでしか飲めないプレミアムワインがグラスでいただけるのである。紫鈴と書いてrindoと読むあの赤ワインは、このところ鮨や和食のカウンターなどでもよく見かけるので気にはなっていた。

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 この店、正式にはケンゾーエステイト・テイスティングルームと言う。フラッグシップワインrindoだけでなく、6種類のプレミアムワインをテイスティングできるのだ。ゆったりした空間にはナパ・ヴァレーの雄大な葡萄畑や醸造所の写真が飾られ、風格のあるホテルのダイニングルームのような雰囲気が漂う。すでに都内に二店舗、大阪にも出店していると聞いた。テイスティングしたのはrindoではなく、aiという赤。漢字では藍と書く。藍染めの藍が紫よりもより深く鮮やかであるように、まろやかで繊細なカベルネ・ソーヴィニヨンである。普段赤を飲まない私でも、これは旨いとしみじみ思った。まあ、グラスのお値段も当然それなりではあったけど。

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 シャンパン、赤ワインをゆっくり楽しんですっかりできあがった夜、シメに(?)どこぞのバルとかカフェによってアフォガートを食していることが写真を見て判明した。最初の食事でデザートをパスしているので、深夜とはいえこれはこれでまあ良しとしよう。