千夜千食

第244夜   2015年6月吉日

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二期倶楽部「ラブリーズ」

メインダイニングがフレンチから和食へ。
予期せぬことだったから少し驚いたのであるが
和になろうとも、さすがにクオリティは健在である。

今年も「山のシューレ」の季節になった。一昨年、昨年と参加したので、当然のように今年も申し込む。ただし、今年はどう調整しても月曜は休めないので、一泊だけである。

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二期倶楽部で一泊しかしないのなら、夕食はメインダイニング「ラブリーズ」でフレンチを楽しむというのが王道のコースであろう。意気揚々と予約をしたが、なぜかフレンチではなく和食の店に変わったという。180度の転換である。なんでそういうことになったのか聞く機会がなかったのだが、フレンチをサーブしているときと空間のインテリアは基本変わってはいない。

料理はメインを三種類の中から選べるプリフィクス。日本酒のリストが大変充実しているのと、やはり和食であるなら私は日本酒派なので、喜々としてリストを眺める。栃木の地酒がずらり。どれも飲んだことのないものばかりで胸が高鳴る。で、まずはメニューのいちばん上にある小山の若駒酒造の若駒。絶滅しかけた酒米「亀の尾」で作った無濾過生原酒で、何と精米歩合が80%という贅沢な酒である。

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これを前菜である、冷湯葉茶碗蒸しと平目の昆布締めと一緒に飲る。茶碗蒸しの雲丹の上には、いくらととんぶりが仲良く並んでい、出汁の風味がみずみずしいジュレとともにふるふるの卵をすくう。そこに、生原酒の清冽を流し込み、さらに紫蘇や大葉、山椒の和のスパイスをまとった昆布締めを口中に放り込み、さらなる甘露で後を追う。八寸らしき五種盛りは、左上から無花果の胡麻酢かけ、冬瓜、伽羅蕗、新じゃがいもの唐揚げ、鮎の塩焼き。続いて出てきたのは、蛤のスープと鰻と新牛蒡の炊き込みご飯である。料理が進んだところで選んだのは、宇都宮の井上清吉商店の澤姫ひとごこち 斗瓶囲いのおりがらみ、純米大吟醸である。かごに盛られているのは、手前は高原野菜の天ぷら、向こうには筍の山椒煮焼き。メインは、栃木和牛のサーロインしゃぶしゃぶ風をチョイスした。澤姫をおかわりしつつ、ちびちびと飲りながら、しゃぶしゃぶ風の柔らかな和牛をいただく。

冷蔵して飲む繊細なタイプが増えてきて、ワイングラスで飲むスタイルがすっかり定着しつつある日本酒。それはそれで悪くはないけれど、私はやはり徳利と盃で楽しみたい派である。贅沢を言うなら、その土地で焼かれた杯やぐい呑にその土地の地酒を注ぎ、ためつすがめつ眺めながら、さすり撫で回しつつ、ちびちびと飲みながら至福の時間を過ごす。そういうのが理想ではあるが、ワイングラスを傾けつつ飲るのもラブリーズならではの体験ではある。

二期倶楽部では、ずっと前からあたりまえのように栃木県産の食材を使っていて、それはここラブリーズでも、もうひとつのレストランでも洗練された地産地消スタイルを楽しめるのであるが、ラブリーズが和食になったおかげで今度は地酒まで楽しめるようになったのは、僥倖と言えよう。