白金鮨「いまむら」
とにかく予約がなかなか取れない人気鮨。
何度も何度も電話して、ようやく確保した貴重な席で
昔一緒に仕事していた人と久しぶりに一献。
ほんとうに予約が取れない。東京行きのスケジュールがもっと早くわかっていれば、なんとかなるのだろうけれど、半月前とかではなかなか難しい。何度か振られて、ほぼ一年ぶり、久々の訪問である。今日は会社の仕事仲間と東京在住の仕事仲間の三人。彼らの反応が楽しみである。
こちらのお鮨は、赤酢と塩を効かせたシャリが特徴で、私が行く鮨の中ではダントツにキリリと尖った味である。エッジが効いているというのか、押しが強いというのか、とにかく独特のシャリに厳選されたネタが合わさって、どこにもない「いまむら流」とでもいうべき個性が光っているのだ。79夜・88夜で攻めてくる鮨と表現したが、その姿勢はまったく変わっていない。
まずは出羽桜とともにツマミをいただく。こうして写真を並べて見ると、ツマミがいかに充実しているかがよくわかる。コリコリのマコガレイ、柔らかく煮たアワビ、とろとろの茶碗蒸し、絶妙の按排に香ばしく焼いた穴子、これぞ江戸前の仕事という仕上がりの白ミル貝、ねっとり官能的なカツオ、皮のパリパリ加減まで計算したのどぐろ・・・。海鼠釉の唐津のぐい呑に痺れつつ、杯を傾ける。
東京在住のS氏が、シャリの酢の具合がすこぶるよいと褒める。今まであまり食べたことのない味わいだと言う。ま、大阪出身の人にとったら、こちらの赤酢の効いたシャリは江戸前の中でもかなり際立つものだと思う。私自身も、もともとは関西の甘めの鮓飯に慣れていた。それが通い出した近所の鮨屋がキリリとした辛めの鮓飯(赤酢は使っていない)を使ってい、次第にそれに慣れるようになってからは、いわゆるザ・江戸前のシャリにも違和感なくなじむことができるようになった。ここのシャリは私も超好みであるので、S氏と共に盛り上がる。
そしてお待ちかね、いよいよ握りへと突入だ。
全部で12カン。第88夜と比べるとよくわかるのだが、基本的な構成はほとんど変わっていない。初っ端はイカ。相変わらず端正な切れ目が入っている。そして金目鯛。今やすっかり定番のネタである。かすごの昆布締めに施された包丁仕事の美しさといったらどうだろう。マグロのヅケ、大トロは安定感のある旨さで、何よりもシャリとの相性は抜群だ。コハダ、ミル貝と続いて、トロたくの巻きが出る。こういうの、箸休めじゃあないけれど、握りの連続の中にちょっと小休止が入るのがなかなかよい感じ。一息ついてリラックスしたらいよいよクライマックスへ。まずはアジ。この艶姿ももうおなじみになってきた。車海老、雲丹、穴子。盤石の安定感をキープしつつ、口中を盛り上げるいまむら三部作。
いやあ、いつ来ても、基本変わらないということの貴重さをしみじみと味わいつつ、今度はいつ来られるだろうかと手帖を睨む。こういうとき、関西に住んでいるのがうらめしい。