一柳の「新幹線にぎり」
これ食べていると検札の人が妙にたじろぐ。
時速285キロで移動しながら
高速につまむ鮨も、また乙。
鮨とシャンパンと歌舞伎のために働いている。とくに鮨と歌舞伎は私の場合、おおむねセットになっている。
新橋演舞場で新春花形歌舞伎「寿三升景清」終演後、予定では今年の初銀座鮨に行きたかったのだが、翌日神戸で用事もあったし、終演が8時だったので、無理せず帰ることにした。こういうとき、銀座のお鮨やさんにテイクアウトを頼む。今まではちらし鮨だった。もちろん銀座の鮨屋だから、ただのちらし鮨ではない。最初、頼んだとき、ふたをあけると一面の黄と赤。たまごと海老がびっしりと敷き詰められてい、食べ始めてもっとびっくりした。たまごと海老だけかと思っていたら、中にはあなご、あわび、こはだがゴロゴロ入っているのである。ソー・ゴージャス。以来、中途半端な時間とか鮨に行くほどの気分でもないから今日は帰ろうか、てなときにテイクアウトするようになった。「新幹線チラシ」といえば、この店では通じる。
で、この日はなんとなく握りが食べたくなった。
そうだ、握りのテイクアウトもありやんか。なわけで、お初となった新幹線にぎり。ふたをとったとき、思わずおおうと声が出た。なんという美しい盛りつけ。握りの一貫一貫が葉欄の仕切りの中にお行儀よく鎮座していて、まるでショコラのアソートのようである。しっぽの長い海老を破調としてアクセントにしているあたりも心憎い盛りつけのセンスだ。もちろんお味の方も、カウンターで食べるのと遜色がない。これはちょっとハマるかも。価格は銀座価格。だけど、何で付加価値をつけるかということが、この店はよくわかっているような気がするのである。