千夜千食

第28夜   2014年2月吉日

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お気に入り「モレスク」

たまご・チーズ・白子の三重奏。
高カロリー&高コレステロールほど
旨いというとても悲しい真実を噛み締める。

 この店に連れて来てくれたのは小学校の同級生K君である。昔からよく行っているくつろげる店だという。いっぺんで気に入ってしまった。食事がおいしいだけでなく、シャンパンやワインもグラスでいろいろ飲める。何より、食後そのままバータイムに突入できるほどウィスキーも充実している。私のお気に入りスコッチも置いてある。そのうえ煙草も吸える。申し分ない店なのである。二度目に訪れたとき、オーナーが私の顔を見るなりにやりと笑い、「ラガブーリン」をカウンターに置いてくれた瞬間にこの店の常連になろうと誓った。一度の来店で顔だけでなく好きな酒を憶えていてくれる。できるようでなかなかできないプロの接客だ。痺れる。以来、東京に何日か滞在するときは、必ず立ち寄る店になった。

 ここの素敵なところは、季節ごとに旬のものをうまく取り入れたメニュー構成と、お腹の具合に応じてハーフポーションにしてくれたり、何品か盛り合わせにしてくれたりと融通無碍な対応をしてくれるところである。

写真写真[1]写真[2]

 この日の入店は10時頃。あまり食べてはいけない時間帯に入ってはいるが、魅力的なメニューを黒板に発見してしまった。まずは、きのこのチーズオムレツ。しいたけとしめじにパルミジャーノがからんだとろとろの卵。視床下部を強烈に刺激し、次なる一品へと向かわせる悪魔のプレリュードである。次は大好きな冬のメニュー、オニオングラタンである。これは、例の軽井沢からニューヨークへとつながりまた白金へと戻ってきたあの味である。本当はここでストップすべきではあったが、白子のムニエルという文字をすでに発見してしまっているのでたまらず注文。「半分にしときましょう」と言われると、力なく「え〜」と言うしかないのだが、台にマッシュポテトを敷いてあり、表面をカリカリにソテーした白子がぷるぷると舌の上で震えるのである。卵、チーズ、白子の三重奏。〆にパスタなどの炭水化物を注文するのは、さすがの私もいかんと思いとどまった。

 ちゃんと食事をする時間帯に来ようといつも思うのだが、夜遅く来ても食事ができるのが魅力で、この店はこのところ夜遅めの食事をする場所になっている。