にほん数寄 『うつわ』その8   

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古伊万里の色絵皿。

th_写真[8]

 とても気に入っている皿である。熟練した手ではない。線もゆがんでいるし、同じような図柄を描こうとしているが、微妙にふぞろいである。ある意味稚拙と言ってもいいのだが、それでも全体として見ると調和がとれている。緑や黄の釉薬の色は、古伊万里というよりは、古九谷を彷彿とさせる。

 古九谷は実は伊万里で焼かれていたというのは、現在の陶磁史では定説になっていて、正式には「古九谷様式」というらしいのだが、日常使う分には古伊万里でも古九谷でもどっちでもかまわないし、よしんば違う産地であってもなんら不都合はない。だけど、中央の四角の縁取りの中にびっしりと亀甲や丸を埋め、色を絶妙に変えながらもうまくまとめている絵心というか、その感覚にはなかなかのセンスを感じるのである。色の配分を考え、図柄を工夫しながら、「お、ええ感じや」とにんまりしている。そんなに神経質でなく、どちらかといえば大らかで大雑把、だけど、コーディネイト感覚が優れてる。そんな愛すべき職人の姿を思い浮かべてしまうのである。濁し手風の白の余白も、とてもよい按配だし、これを瑠璃釉の皿などと組み合わせて使うと、食卓がいっきに華やかになる。

 元々は父が所有していたものだが、とても気に入ったので養子にもらった。ステーキなどを、どん、と豪快にのせるのがよく似合う皿である。三枚しかないので、大事に使っているが、すでに縁が少し欠けている。こういうのに金継ぎをすれば、またそれはそれで味が出るだろう。