千夜千食

第37夜   2014年2月吉日

  • icon_14px
  • icon_14px
  • icon_14px
  • icon_14px

冷やし担々麺「龍天門」

裏メニューという噂は
実はみんなが知っているが
それでも通ぶって注文したい「あれ」。

 ホテル中華はここ、と決めているところがあるので、こちらには滅多に来ない。が、ときにたまらなく食べたくなって遅めのお昼にこっそりと食べに来るものがある。

 恵比寿ウェスティンホテルの龍天門。こちらで裏メニューといえば、あれしかない。

 あれ。
 そう、冷やし担々麺である。

 いちおう、裏メニューであるからメニューにはいまだに載っていない。だが、季節を問わず注文できる。どうです。この彩り。

写真

 顔を近づけるとまずは胡麻の香ばしい香りが立ち上がってくる。この香りにいやがおうにも食欲が増してくる。胃袋がぎゅうっと反応する。唾がしゅるしゅるわいてくる。ラー油のオレンジとネギの緑、その上に肉味噌がのっかり、そしててっぺんには白髪ネギ、さらにその上にパウダーのようにかかっているのは花山椒。もうこれだけで、ちょっとした食べる芸術品である。まずは、スープをひとくち。甘辛いスープにこっくりした胡麻の味わいと香りが混ざって、うーん至福のひとときなんである。辛さはスープを飲んだ後から少々控えめにやってくる。お次は麺をすする。冷たいスープの中できゅっと引き締まった歯ごたえのある細麺である。こんどは、散蓮華で肉味噌をすくう。う、旨い。椎茸と挽き肉の幸福な結婚。白髪ネギも小気味よいくらいにシャキシャキ。で、次はスープだけをじっくりと味わう。気がついたら、夢中になってこの繰り返しをオートマティカルにやっている。いかん、いかん、と思いながらも、スープは最後まできれいに飲み干してしまう。

 冷たくても、やはりそれなりに汗は出るし、最初は控えめな辛さだと思っていても気がつけば口の中が真っ赤っ赤になっているような感じになる。だけど、やっぱりこれ食べたさに年何度かはやってくる。やって来ずにはおられない。

 今のところ、私にとっての「冷やし担々麺」の東京ナンバーワンである。うん。