千夜千食

第59夜   2014年4月吉日

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同心「CHINESE TANAKA」

一度は夜来てがっつりやりたかったが
欲張りすぎてお腹パンパンになっちゃった。
今度はぜひともゆっくり食べに来たいご近所店。

 ここはもともとマッサージ屋さんだった。親しくしているクライントの女性から「いいですよ〜」と教えてもらい、一度だけ行き、近所だからとすっかり安心していたらある日店はクローズし、その後に入ったのがこの店である。中華と言っても、外から覗く限りはいまどきのイタリアンのようなおしゃれな感じ。窓も大きくてカウンターがよく見える。新しもの好きだし、中華だし、ということで、ある日のランチにチャレンジしてみた。

 うーん。これは何だろう。街場の中華にしては味にパンチがない。だけど、やさしくて、なんだか心惹かれる味である。しばらく通ううちに、それは中華にありがちなケミカルな調味料を一切使っていないことからくるのだということに気づいた。ビオ中華とでも言おうか。

 中華といえば昔はあたりまえのように化学調味料を使っていたらしい。その良し悪しが議論されて久しいが、あの独特のガツンとくる味が街場の中華の本領だった時代もあった。上手い料理人は、さりげなく化学調味料を使うということも料理人自身から聞いたことがある。だけど、今となってはできるだけ自然な状態のものを自然な調味料で食べたいと思うのが多くの人の本音であろう。その流れにこの店は、直球でストライクを取りに行っている。

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 店主である田中さんは、昼も夜もひとりで料理を作っている。カウンター全10席。ランチタイムはいつも混んでいるが、段取りよく中華鍋ひとつで料理を仕上げ、デザート付きの充実したランチを提供している。オープンしてまだ間もない頃、月曜行くと中華麺でその週は毎日麺にしようと思うと言うので、一週間どんなバリエーションで攻めてくるのかと定休日の木曜以外、毎日日替わりの麺を食べに行ったこともある。飽きさせないよういつも熱心に工夫を重ねていて、私はこういう料理人の心意気が大好きなのである。

 夜も一度だけちょっぴりデラックスな残業食をと出かけたことがあるが、このレベルの料理をお腹を満たすだけの用途で使うのはあまりにももったいない。だが、あまりにも会社に近すぎるので、なかなか行けなかったのである。そんなある日、夜の講演に参加することになり一時間ほど余裕があったのでチャンスとばかりに駆け込んだ。

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 紹興酒をまずは一杯。だけどそんなに時間はない。定番の棒々鶏。海老と帆立の炒めもの。蟹チャーハン。どれも文句なしの味である。だが、やはりひとりでは少し無理があった。凄いスピードで食べたのもいけなかったが、やはり丁寧に誠実に作ってくれる料理は誰かと酒を飲みながらゆっくり楽しまなくては・・・そういうわけで、いつかは夜にちゃんと来たい店なのである。だけどあまりにも会社に近すぎるせいで、誰を誘うかが問題である。店の前を通るたびに、誰と行こうかとずーっと悩んでいる。ま、ひとりでもいいんだけれど。