千夜千食

第73夜   2014年5月吉日

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金沢バー「bar quinase」

鮨の後にちょっと2、3杯飲みたいとき
この広々したカウンターが気持よくしてくれる。
金沢の深夜のお楽しみは、このバーで。

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 この店は、「小泉」の大将に教えてもらった。金沢の飲食店口コミ数珠つなぎである(笑)。「スコッチとかを飲むのに感じのいいバー」というリクエストで、真っ先に名前が上がった。初めて行って、いろいろ話をすると「みつ川」の大将も、もちろん「小泉」の大将もよく来る店であることがわかった。さらに、一年後に来てみると、マスターが私の顔を見るなり「みつ川」の帰りですか?と話しかけてきたので、その凄い記憶力にも驚嘆させられた。

 鮨や天ぷらもいいが、食後のスコッチのために、多少は余力を残しておかなければいけない。もちろん、ここに来るために。

 店があるのは片町。香林坊裏手の猥雑で少し妖しい繁華街を歩くと、「bar quinase」の看板が出ている。ドアを開くと、そこは別世界。手前右に小さなテーブルがふたつ、そして右手には奥まで続く長いカウンター。きわめてオーセンティックな大人のバーが出現する。店名の「quinase」はオーナーである木名瀬さんの名前をベースに、ちょっとした遊び心でもってフランス語風に「qui」をつけている。洒落ているではないか。

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 カウンターはかなり長いのにもかかわらず10席しかない。つまり、広々とした気持ちのよいカウンターで、ゆったりとくつろげるバーなのである。私はほとんどスコッチしか飲んでいないのだが、知らない名前のレアスコッチもたくさんそろえているし、回りの人が飲んでいるカクテルなどもすこぶる美味しそうである。イギリスの生ビール「bass pale ale」を樽で出したりもするらしいし、オリジナルジンジャーエールを使うモスコミュールも評判であるらしい。マスターである木名瀬さんは、とてもお茶目で気さくなキャラクター。この長いカウンターと手前のテーブル席すべてをひとりで仕切りながらも、いろんなおいしいもの情報はもちろん、ウイスキーやカクテルについてもいろいろ薀蓄を語ってくれる。こういう店を旅先でひとつ押さえておくと、たいへんに心強いのである。

 観光都市金沢にふさわしく、私が伺う連休には関西からの客も多い。今はまだ圧倒的に関西方面からの観光客が多いようだが、新幹線が開通する春以降は関東からの客でもきっと賑わうだろう。