千夜千食

第74夜   2014年5月吉日

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金沢・鮨「あいじ」

オリジナリティのある鮨とツマミの
連打にこたえきれなかった状況が惜しい。
また、次回ちゃんと伺いたい店である。

 本当は空腹でちゃんと伺うべきであった。鮨旅行の最後の最後、早めの夕食をと予約していたが、さすがに鮨だけ4連発はキツイと思い、最終日のランチに天ぷらを入れた。そのせいで、ランチの後かなり歩いてはみても思ったほど空腹にはなっていない。それでも、次来るのはたぶん一年後になると思うと、ついつい欲張ってしまうのは悲しい性である。

 こちらのお店も犀川のすぐ傍の路地沿いにある。時間が早いので他に客はいない。あまりお腹が空いていないので、申し訳ないですが軽めでとお願いする。快く「では食べていただきたいものをメインにお出しします」との返答。鮨はこういうとき、自分のペースで食べられるので本当に便利である。もちろん、要望にきちんと応えてくれる鮨屋であるからこそであるが。

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 とはいいながらも、いきなり鮨は食べない。やはり少しだけでもツマミは味わいたいのである。塩でいただくタコ。がすえびのお椀でほっと一息ついて。お造りは、アラの生と炙り二種、アカイカ、ヒラマサ、のどぐろの炙り。金沢でアラをいただけるとは思わなかった。もっとも、いまだにクエとアラの区別が厳密にはできない。そしてまとう鯛のポン酢。鮨は甘海老の昆布締め。これは初めていただく。昆布で締めることで、ただでさえねっとりした甘海老が、昆布のエキスをまとい究極のにちにち状態に。煮はまぐりもとろける食感で、非常によい仕事がなされている。今度はキンキの昆布締め。キンキという魚も大好物なのであるが、あの脂が昆布によってなだめられ、おだやかかつまろやかな味になっている。続いて雲丹の蒸し寿司。こちらの自信作らしいが、雲丹の上に熱々のあんがかかっている。生ものばかり食べているから、あたたかいものが間に入るとホッとする。初日の「八や」でも蒸し鮨が出たが、これはやはり北国金沢ならではの配慮なのだろうか。こういうのがその地方地方で特徴的に感じられるのが、日本のいいところであるし、旅先で必ず鮨に行く愉しみでもある。お次はまとう鯛。マナガツオに似た旨味が凝縮した味で、これも初めていただいた。いろいろ知らない地の魚をいただけるというのが、鮨好き、魚好きにはこたえられない鮨旅行の醍醐味である。

 こちらの店は、ガリの代わりに野菜の浅漬けが出るのもユニークである。鮨が続いているので、ガリの酢ではない野菜の甘さとシャキシャキした食感が新鮮に感じられたということもあっただろう。

 だけど、鮨だけでなくご馳走というもの、やはりおなかをぺこぺこにして食べなければ、店にも悪いし後味もよくない。何事もやり過ぎ(食べ過ぎ)、ツーマッチにならないようにと自分自身を戒める。しかし、二泊三日の鮨旅行。こちらも含めて初めての店にも行け、たいへんに充実した日々であった。また、一年後。