千夜千食

第95夜   2014年6月吉日

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二期倶楽部の「ディナーⅡ」

素材を活かしたモダンキュイジーヌ。
「洗練カジュアル」と呼びたくなるような料理である。
こちらもラ・ブリーズに負けず劣らずのレベル。

 二期倶楽部には1986年のオープン時に建てられた本館と、コンラン&パートナーズがデザインしたモダンな別荘スタイルのパビリオン東館のふたつの宿泊施設がある。それぞれにレストランがあるのだが、去年は本館のメインダイニング“ラ・ブリーズ”しか体験出来なかったが今年は2泊するので、今夜はその東館のガーデンレストランでのディナーである。

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 泊まっている部屋は、本館の竜胆。東館に行くには少し歩くのだが、渓流にかかる木の橋を渡るとアッと言う間に到着するのだ。森の近道。初めて滞在したとき敷地内をいろいろ散策したおかげですでに大好きな場所がいくつかあって、この橋へ降りて行くルートはとても気に入っている。雨の音、せせらぎの音。階段を下りるトントンという足音を自然のリズムに同調させながら、歩く。(露天風呂へと続く道は、夜遅くだとちょっとした肝試しもできてもっと大好きだ)

 ガーデンレストランへ入ると、左サイドは全面ガラス窓。昼間は素晴らしい風景が見渡せるのだが、夜は夜で雑木林の中に点在する東館のパビリオンの灯りが見える。レストラン内も映りこみ煌めいている。こちらのコンセプトは、シンプルでヘルシーなモダンキュイジーヌ。自家菜園「キッチンガーデン」からは毎朝新鮮な無農薬野菜が届けられ、魚介類や肉などはグリル料理が中心だという。

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 ソーヴィニヨンブランの白をいただきながら、アミューズを待つ。小さなコンソメスープとカツオのスモーク、ベビーコーンのグリル。素材の味がしっかり生きている。オードブルは、春野菜のカラフルテリーヌ。どうです、この彩りと盛り付け。あまりにも美しいので、この千夜千食のイメージ画像として使わせてもらっているひと皿である。野菜のピューレとハーブのドレッシングがまた利いているのだ。目で愛でて、舌で味わって、心が震える。まさしくそんな一品だ。パスタは春野菜とからすみのスパゲティー。これはパスタ、スープ、寿司からセレクトするのだが、からすみと書かれてあるのを見ると迷わない(本当に、卵という卵、卵巣も、精巣も、肝も全部好き)。魚は鱒と茸、蓮根と白身魚をムースにしたものを春キャベツで包んでいる。これがね、おいしいのなんのって。頬っぺたが落ちるとはまさしくこういうことね。ベルモット風味のバターソースをきれいに、きれいにパンで拭う。メインは65度の低温調理で仕上げた幻のポーク“梅山豚”。日本にたった100頭しかいない原種豚と言われているらしいけど、それはそれはきれいなピンク色のお肉。ポークの下にはキノコのソースが隠れてる。デザートはピスタチオのムース、桜ヨーグルトソルベ添え。もう少し、ストレート勝負なのかしらと思っていたけれど、素材を活かしつつもひと手間かけた料理は、見た目も味も大満足できるもの。洗練カジュアルという言葉を料理に使うことを許してもらえるなら、まさしくそんな印象であった。

 いやあ、これは本館のラ・ブリーズと甲乙つけ難いわあ・・・41室しかないのにこんなレストランがふたつもあるなんて、二期倶楽部恐るべし。