大阪「Sバー」
この店が凄いのは酒だけでも
マスターのトークだけでもないことがわかった。
「 待望・羨望・欲望 」のサンドイッチ。
ここのことを堂々とは書けない。あくまでこっそりと書いているつもりである。なにしろ紹介制だし、どうも店主のSさんのお眼鏡にかなわなければ、紹介してもらってもそう気軽には出入りできない感じがする。ま、お酒が飲めない人は駄目ですね。あと、騒ぐ人。なので、せいぜい一人か二人、ゆっくりお酒を飲みたいときとか、酒好きな人にスペシャルな心地を味わわせてあげたいとき専用の店である。
今宵は仕事の相棒と。噂のジントニックに感動してもらおうと、取引先のきれいどころも誘っていたのだが、急な体調不良で二人だけとなった。相棒もこの店ははじめてなので、それはそれでよしとする。なんといっても、まずは、例のジントニックに感動してももらわなければ。それにしても、Sさんのつくるジントニックの素晴らしさといったらどうだろう。「森へ散歩に行く感じ」とご本人は表現されるのだが、それだけではない。柑橘の爽快さと高貴な甘さ。そこへ杜松の実の清々しいスパイシーさが合わさって、立体的な針葉樹の森が立ち上がるのである。
前回(第53夜)スペシャルな手作りケーキも美味しいと書いたが、実はサンドイッチも凄いのである。もちろん、事前に今日はサンドイッチもお願いしますと言っておけば、ちゃんとパンも、卵やチーズやバター、野菜も、しかるべきところから仕入れて作ってくれるらしいのである。当然、予約をしなければいけない。ところが、この日もともと4名で予約を入れていたものだから、もし注文があればと、軽い準備だけはしてくれていたのである。そして。「トマトサンドイッチくらいならできます」という幸せな御神託が下ったのである。「二人前ね!」という私を相棒が制し「一人前でじゅうぶんやろ」。え〜、後悔してもしらんけんね。
サンドイッチを一口齧ったときの驚きよ。このできばえの素晴らしさを写真だけで伝えるのには無理があろう。そもそもメインの具がトマトというだけでも、意外であるのに、トマトが立派なメインの具になっているのである。もちろんトマトの吟味というのは必須であろうけど、あんなにある意味みずみずしいものを、パンにはさんで料理として成立させるとは。軽く玉子やハムもはさんではいるが、あくまでメインはトマト。カリカリにトーストされたパンとまたこれが凄い相性なのである。相棒は「もう一人前いけたな」とつぶやく。だから、言ったでしょ。もう遅いわ・・・とぶつぶつ言う私。さほどに、衝撃的なトマトサンドイッチであった。これで、事前にいろいろお願いしていたとしたら、一体どんなサンドイッチを食べさせてくれるのだろう。
この日もレアもののモンテゴメリーズのシングルカスク、アドベッグ・オールモストゼアをちびちび飲りながら、チーズの盛り合わせをいただく。この盛り合わせも凄いのだ。なにしろ、黒板メニューのところに<危険!チーズ盛り合わせ>と書いてあるのだから。もちろん、危険というのは酒が止まらなくなってしまうという意味である。しかも〆に特製ケーキまでいただいてしまった。というか、この店でケーキを食べないわけにはいかないでのある。今夜は、シンプルなパウンドケーキ。てっぺんのレモンシュガーの風味の絶佳なことよ。
この店に連れてってほしい人は、こっそり直メールでリクエストくださいまし。