千夜千食

第114夜   2014年8月吉日

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大阪南森町「めん坊」

熱い夏の夜にはここの「冷やし焼き豚うどん」。
もう足かけ30年以上食べているかもしれない。
だいたい週1回、年約30〜40回は通っている店。

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大阪北区紅梅町。昔からずーっとあるうどん屋さんである。独立するまでは勤めていた会社のすぐ近くにあったので、残業するたびに週二三回は通っていたと思う。ここのメインはもちろんうどんであるが、うどん県でもないのになかなかコシのあるいいうどんを打っている。なので、昔からここのうどんだけは普通に食べている。

きつね、卵とじ、昆布、五目、鳥なん、けいらん・・・。ひと通りのうどんはあったのだが、ある夏の日突如として「冷やし焼き豚うどん」というのが出現した。冷やしうどんにトッピングされているのはわかめに温泉卵、気前よくざくざく切った焼き豚にたっぷりの刻みネギ。これにはすっかり参ってしまい、ひと夏中夢中になって食べた。やがてこのメニューは定番化し、ロングセラーとして定着した。

いつの頃からか、残業するときの食事を近所の店に頼むようになったので(第86夜参照)、ここは水曜オンリーの店になった。それと同時に、30年という月日の間に客の利用の仕方も変わり、和の定食や鍋なども充実し、ちょっとした居酒屋感覚の店になってきた。もちろん、我々はいつも残業のための食事をするので、酒は飲まず、サッと入店して、サッと食べ、サッと出る。食べるのは、たいていは丼ものか、焼き魚定食といったもので、もう長年「冷やし焼き豚うどん」があることなど忘れていたのである。メニューもめったに見ることはない。

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それがある日、珍しく注文に悩んでメニューを見ていたら、うどんの部に懐かしの「冷やし焼き豚うどん」を発見したのである。さっそく、注文。昔と少し変わったのは、よりヘルシーさを追求してサラダ菜やトマト、玉ねぎのスライスなどが追加されているくらいで、後はなんにも変わらない。焼き豚は噛みしめると、じんわりと肉の旨味を感じる仕上がり。自家製なのだろうか。ていねいに作っていると思われる堂々たる味である。

身体がすこぶる快調で、おなかもそこそこ空腹で、冷たいうどんが食べたいけど、それだけじゃちょっと物足りない。そんな日にぴったりの「冷やし焼き豚うどん」。焼き豚の量があまりに多いので、最近は焼き豚の量だけ半分にしてもらっている。そんなところが、やっぱり歳か(笑)。