千夜千食

第156夜   2014年12月吉日

  • icon_14px
  • icon_14px
  • icon_14px
  • icon_14px

佐島・地魚料理「はまゆう」

三浦半島でスペシャル撮影するとき足を伸ばす
朝捕りの新鮮な魚料理が味わえる店。
こういうのが東京近郊にあるのはいいな。

 ロケーション撮影のときはたいてい朝ごはんだけで昼過ぎまで頑張って、終了後にみんなでお昼ごはんを食べに行く。葉山や逗子でスペシャルな撮影をしたときちょくちょく立ち寄るのがここ。佐島魚市場で毎日魚介類を仕入れ、調理してくれる地魚の店である。こちらのおじいさんにあたる方が定置網漁を行う漁師だったというから魚の仕入れも見極めもプロである。ご両親が始めた食堂が前身で、今では地魚料理専門店として名を馳せている。

 おじいさんが常々言っていた「お惣菜にするシイラ、メジナ、ボラ、悪食のクロダイ、雑魚を使って商売をするな」が遺言で、それを忠実に守っているのだという。素晴らしい。当然、朝捕った魚しか使わない。マグロは佐島でメジマグロの水揚げのないときは仲買を通して三崎で仕入れるらしいが、それ以外はすべて市場で入札する魚介類と漁師から買う魚だけというから、徹底している。こういう姿勢、大好きだし、地魚と言うからにはこうでなくちゃあいけない。

 魚好きとしては、漁港の近くの地魚は魅力的ではあるのだが、産地で食べる魚が必ずしも旨いかといえばそうでもなかったりするのが面白いところである。刺身といえど、それも料理であると考えると、刺身にしたときにいちばん美味しい頃合いを見極め、包丁を入れ、どういう厚さで切って出すかには、料理人の経験と魚に対する知識やセンスがおおいに関わってくる。腕に覚えのある料理人(鮨職人が多いが)が出す刺身は、産地の新鮮さに勝ることが多い。それは、技術の洗練具合と言い替えてもいいのだが、ただ新鮮なだけならそりゃあ圧倒的に産地のとれとれが旨いに決まっているのだが、そうとも言えないところが、たかが魚でされど魚の奥深さである。

th_IMG_2108

 そういう意味ではこの店は、新鮮さとそれを料理する技術の両方を兼ね備えており、さすがに魚を熟知しているだけのことはある。地魚を無造作な感じで出しながらも、ちゃんと美味しく食べさせる計算が行き届いている。この日注文したのは、刺身定食。マグロ、イカ、カンパチ、アジなどとれとれのお刺身が8種類も乗っている。どの魚もいい具合に活かっており、魚好きをううむと満足させてくれる。看板メニューの「はまゆう御膳」は、刺身三種盛りに焼魚、揚げ魚にごはんと味噌汁がつく定食だ。こんなのお昼に食べたらバチがあたりそうなゴージャスさ。さすがに撮影ランチでは無理だが、いつかプライベートで来てチャレンジしてみたいと思う。