千夜千食

第184夜   2015年1月吉日

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舟和「芋ようかん」

そのまま素朴な味わいを楽しむのもよいし
家でバターを落として焼くのも乙。
こういう庶民の味はずーっと残ってほしいね。

 昔からここの芋ようかんは大好物である。

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 年に一度、浅草へ新春歌舞伎を観に行く。これは若手による花形歌舞伎というもので、ここ数年は応援している尾上松也丈が出ることが多いので、コンスタントに通っている。浅草公会堂は浅草寺のすぐ隣にあり、開幕前や幕間に仲見世通りやオレンジ通りなどをうろついていて、本店を発見した。
そうか、こんなところにあったのね。

 大昔の関西では百貨店の催事でしか手に入らなかったが、気がつけば新幹線の品川駅でも売るようになったので最初の頃こそ何度が買ったが、いつでも買えると思うと有り難みがなくなるものである。が、それでも、本店というのはとくべつである。

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 本店での人気ナンバーワンはもちろん芋ようかんである。が、あんこ玉も美味しそうである。しばし悩むが、おみやげにもしたいのでやはり芋ようかんが王道であろう。こちらの芋ようかん、甘藷(さつまいも)を一本一本手で皮をむき、砂糖と塩だけで作る。だからさつまいもの素朴な味が活きた、飽きない味になる。日持ちしないので、店では秋冬の食べ方として焼芋ようかんというのもすすめている。オーブントースターで焼き目をつけたり、フライパンにバターを落とし焼くのである。私は、食べ飽きたときは、適当な大きさに切り芋きんつば風にして焼く。バターをたっぷりまぶして焼き、シナモンなどをかけるのもおすすめである。

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 そして本店では、芋ようかんのソフトクリームというなんとも魅力的なものまで売っていた。芋ようかんが入っているのである。このポテトチップスのようなものもさつまいもでできている。芋金貨というお菓子である。クリームの舌休めにときおりポリポリ。ふっふ、これは歌舞伎の幕間のおやつとしてはちょうどいい。店先の小さなベンチに腰掛け、ゆっくりと味わう。寒い季節ではあるが、芋ようかんというのはなんだか焼き芋を連想するので寒くはない。

  店頭を観察していると、芋ようかんやあんこ玉とともに“すあま”というのが飛ぶように売れている。“すあま”?「すはま」の間違いではないのか、と思うのだが、何度確かめても“すあま”とある。それにどう見ても「すはま」とは別物の紅白の餅菓子のようである。

 「すはま」は洲濱と書く。関西ではおなじみの大豆粉に砂糖と水飴を合わせ練った和菓子で、しゃりっとした感触がきなこ好きにはたまらない。、京都の植村義次のはあまりにも有名である。が、こちらの“すあま”は、たぶん素甘ということであろう。調べてみると、やはり餅菓子の一種で上新粉に甘みをつけ蒸したものであった。これはこれで美味しそうなのである。来年の浅草新春歌舞伎に行ったら、“すあま”にも挑戦してみよう。