千夜千食

第222夜   2015年5月吉日

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台北・牛肉麺「十三香」

醤油ベースの辛味の効いたスープに
コシのある細麺が絶妙にマッチした牛肉麺。
軽く麺を食べたいお昼に、ここちょうどよいわ。

 台湾グルメはいろいろあろうけど、昨夜(第221夜参照)はフカヒレ責めにあったので(自分で責められに行ったんだけどね)、本日のお昼はあっさり行こう。ホテルのすぐ裏側には台北101というランドマークがあるのだが、これが今の台北を象徴するような近未来的なタワーで少し前まで東洋一の高さだったらしい。その近くに、四四南村というレトロな元軍人村を保存しているエリアがあるというのでまずはそれを見に行くことにする。

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 ここは戦後に中国大陸から渡ってきた軍人たちが住んでいたそうで、今は文化財として保護されているのだそうだ。昔ながらのエリアをいまどきの感覚でリノベーションしたカフェや雑貨屋には、若い人たちが群がっている。台湾版懐古趣味である。日本の町屋をリノベーションした施設に人が集まってくるのと一緒で、往時の建物の雰囲気や生活スタイルが若い人だけでなくかつて経験した人にも新鮮に映るのだろう。なにより、こういった昔の建物を壊してしまうと、もう二度と同じようなものは建築されないだろうから、今となっては貴重な文化財である。平屋が連なる屋根からは台北101が見え、こういう新旧があっけらかんと共存しているのが、台北のモザイク的な魅力なんだろうなと思う。

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 四四南村のさらに奥は呉興街という入り組んだ路地が連なる空間で、歩いているだけで妙に楽しく、迷路に迷い込んだような感覚になる。小さな公園や店先では、近隣の人や犬たちがくつろいでいる。煙草をうまそうに吸っているおじいさんなどを発見すると、私もベンチの端っこに座り、へらへらと一緒の空間で煙草を吸わせてもらう。そんな道草を楽しみながら、ぶらぶら歩く。朝ごはん抜きだったので、さすがにお腹がすいてきた。地図上ではもう少し南の方に、麺が美味しいという店がある。直線距離では八百メートルぐらいなのだが、歩いても歩いてもたどりつかない。が、歯をくいしばって、とにかく歩く、歩く。やがて崇徳街という大きな通りに出た。ここから和平東路という幹線道路をひたすら西へ。朝から歩きっぱなしでさすがにへとへとであるが、ようやく目的の店の看板が見えてきた。

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 店内はガラガラである。冷たいビールを飲みたいのを我慢し、まずは席に陣取る。手渡されたののはメニュー表である。麺の種類が羅列してあり、値段もその横に書いてある。食べたいものを選んでテーブルに備え付けてある鉛筆でチェックを入れたら注文完了というシステムである。これはいい。非常にわかりやすく、指差しよりずっと確実であるな。

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 しかし、漢字の判読にたいへん苦労する。台湾は中国本土と違って繁体字なので、ほとんどの漢字が読めるのであるが、それにしても、これだけ種類があると・・・ううむ。こういうときは、自分の勘に頼る。食べてみたいのは、台湾名物の牛肉麺。

 さんざん迷った挙句、「紅焼半筋半肉麺」というのをセレクトした。予測では、牛スジと牛肉が半分ずつ乗った麺であろう。牛肉麺は台湾では非常にポピュラーであると聞いた。紅焼の他に麻辣と清椒とついた牛肉麺もあったが、字面から想像するにどちらも辛いに違いない。紅焼はよくわからないけど、まあ、なんとかなるだろう。あくまでも勘であるが。

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 やってきた麺には案の定牛スジと牛肉が入っている。ひと口スープを飲むと、醤油ベースの中に心地よい辛みがある。かすかに香るのは八角の風味。悪くないね。牛スジはよく煮込まれてい、トロトロ直前の絶妙な食感である。麺は細め。これがまた、スープと相性良く食べやすいのである。かつて北京や上海で食べた麺が私にとってはことごとくハズレだったので(とくに紫禁城の前にある店で食べた麺はひどかった・・・コシがなくふにゃふにゃで失望したことは今でもよく覚えているし、それが、なあんだ、本場の麺ってこんなものなのかという気持ちにもつながっている)、正直台湾であってもそんなに期待はしていなかったのだが、こういう麺なら話は違う。細麺ながら、それなりにコシもあり、辛めのスープにもよくなじむ。

 ドカンと一発で満足する日本のラーメンタイプではないが、適度におなかがすいたとき、お昼ごはんとしてサッと食べる。で、また昼から一生懸命に働いているうちに夕餉の時間になり、気がつけば良い具合におなががすいている。そんな胃に負担を感じさせない麺である。

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 いかんと思いつつ、スープも半分以上飲み干したのだから、うまい麺である。しかし。気づかなかったが、テーブルには「白菜獅子頭麺」のPOPが置いてあり、これはこれで美味そうである。写真から想像するに、獅子頭というのは肉団子であるらしく、たっぷりの白菜も添えられている。絶対こっちの方が好みである。「紅焼半筋半肉麺」を完食したばかりである。さすがにもう一杯は無理であるので、次回は獅子頭にチャレンジしようと固く誓った(笑)。