千夜千食

第246夜   2015年6月吉日

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大阪本町「時分時」

文楽夜の部がハネた後に来るのに
なかなかの穴場であるかもしれない。
なにしろ、一回目の時間帯の予約が超困難なので。

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今宵は、大阪の国立文楽劇場で催される文楽鑑賞教室へ初心者2名を連れて行く。鑑賞教室と名前が付いているのは、演目の前に三味線や太夫、人形遣いの人たちがそれぞれをわかりやすく教えてくれる解説付きだからで、そのせいかなかなか人気が高い。二晩ほどは夜6時半から始まる「社会人のための文楽入門」という日があり、仕事が終わってから余裕で観に行けるのだ。演目は、近松門左衛門の名作「曽根崎心中」である。これは何度観ても(聞いても)良いし、初心者でもわかりやすい名作中の名作である。終演は9時少し前なので、夕食は少し我慢して終演後に行くことにする。

さて、どこに行こうか。9時過ぎというのは微妙な時間である。いろいろ考えていて、思い出した。第200夜で東京からのお客様を連れてったら、たいそう喜ばれたあのお店。あそこがいい。あの人気店なら2回転目に入れるかも。予約の電話をかけたら、すんなり9時半ぐらいなら、と取れた。

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まずは、磯自慢で乾杯する。今夜の「曽根崎心中」についての感想をいろいろ言い立てる。なにしろ、最前列のかぶりつきである。クライマックスの心中シーンなど、目の前で観たので、そうとうに感情移入し、泣かされたのである。なんでお初徳兵衛は心中という方法しか選べなかったのだろうか。そういう時代だったから?身分制度というものの中にがんじがらめにされていたからか?好き勝手な解釈をあれこれ言いつつ、酒の肴にする。

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ぷりぷりの海老のサラダに、おすすめの串焼きからスタートである。この貝柱の上につぶつぶの畑のキャビアとんぶりを乗せた一品、椎茸フォワグラバターも相変わらずの悪魔のような旨さ。たまらず、二杯目の日本酒黒龍を所望する。サラダでも食べているのに、またぷりぷりの海老を串焼きでかぶりつく。とろけるような脂が入った牛肉は、口に入れた途端すーっと溶けていく。田楽風の一品は、もちもちの生麩。外側の香ばしさがたまらない。

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海苔をくるりん巻いて食べる軽く炙った穴子。山芋とアボガドのソテー。カイノミステーキ&ガーリックのソテー。淡路の玉ねぎのステーキ。これを純米の冩楽と一緒に食す。ああ、もうどの一品も素材の旨さと調理法が見事にマッチしていて、もういくらでも食べられそうだ。

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今日は三人いるので、シメの炭水化物は三種類。まずは、そばめし。これは関東の人にはほとんどなじみがないと思うので説明しておくが、焼きそばをごはんと同じ長さぐらいに鉄板の上で刻み、焼き飯状にしたものである。もともと神戸発祥と聞くが、たしかに神戸の下町のお好み焼き屋のメニューではおなじみのものである。しかしこうやって、クオリティの高い牛肉などを具にしてしまうと、B級のそばめしも立派な一品である。お次は、もやしそば。シャキシャキのもやしと白髪葱をたっぷり盛ったい一品。そして、ここに来て食べないわけにいかないのが、豚玉である。この垂直にすっくと立った厚みを見よ。

やっぱり三人ぐらいで来るといろいろ食べられるし、シメの炭水化物がこんなにも充実する。また、すぐに来たい。