千夜千食

第248夜   2015年6月吉日

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横浜「勝烈庵」

へええ、こんな民芸風のとんかつ屋さんがあったのね。
創業は、なんと昭和2年という横浜の老舗。
とんかつが美味しいらしいのでやってきた。

横浜で撮影の仕事である。たいていは午前中に終わるので、ランチは昼時の混雑が始まる前におめあての店に入れることが多い。そして、たいていは中華料理に行くことが多い。ほぼ90%の確率である。

ところがこの日に限っては、いつもの中華エリアに行くには少し時間がかかる場所での撮影だったので、ここにやってきた。とんかつにはあまり食指が動かぬのであるが、ここは店に入った途端気分が上がった。

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まず、看板の文字が良い。どことなく、民藝の匂いがする。で、中に入るといきなり棟方志功の『無事』という扁額が掲げられているではないか。どうやら民藝大好きな店のようであるのだ。調べてみると、こちらの先々代が濱田庄司の窯を訪ねた際、宿泊した旅籠に飾られていた棟方志功の作品に感銘を受け、その縁で濱田庄司が棟方志功を紹介してくれることとなり、以来交流を深めたというのである。こちらの店名も、もちろん看板の文字も、棟方志功の手になるのであった。民藝の匂いがするって、いや、モノホンのバリバリの民藝なのであった。どうもすみません。

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各自メインは勝烈定食というヒレかつ定食にする。それにみんなで少しずつつまめるようシーフード串揚げというのも注文する。創業以来の味を受け継ぐ秘伝のソースをたっぷりとかけ、かぶりつく。サクサクの衣と程よく揚がった豚肉とのワイルドなマッチング。勝に烈という意味も字面もはげしい文字を選んで組み合わせいるだけあって、勢いのある味わいである。ソースが美味しいので、大盛りのキャベツもどんどん入る。定食にはシジミ汁もついており、こちらも特製の黒味噌が使われている。あっという間に完食した。

たまには、ガツンと、トンカツ。というのも、なかなかよいもんだ。