中目黒「歩路庵」
神戸出身のシェフが腕を振るう創作キュイジーヌ。
今でも神戸六甲に店がある、行ったことはないけれど。
名物の焼き寿司は、みんな食べるとびっくりする。
歩路庵。ポジアンと読む。正式な店の名は、ポジティブアンバランス(positive imbalance)というので、今どきの省略をすればポジアンで、それに当て字をしたと考えられる。
飲み友達のヨシヒコが、地元でちょくちょく行っていた旨い店で、そこのシェフが東京に移住し同じ名前で店を出しているから一回行ってみと言うので、機会を作ってみた。中目黒の駅から歩いてすぐの雑居ビルの二階。この辺のエリアも東京での行動半径の中に余裕で入るので、レパートリーのひとつになればいいなと思ったのだ。
いや、ここ、いい。
店内は、オープンキッチンをぐるりとカウンターが取り囲んでいて、料理を作っているのが見える今どきのレイアウトである。魚介類が中心であるが、肉や野菜もしっかり充実していて、和×フレンチ×イタリアンの和洋折衷バトルロワイヤルメニューがなんとも魅力的なのである。
初めて訪れてからというもの、会社の子と行ったり、昔のクライアント様を誘ってみたり、撮影スタッフと行ったりと、いろんな状況で行く店となった。コースを頼んでも、アラカルトでも、シェフにお願いするといつも臨機応変にメニューを考えてくれるし、肉と魚と両方食べられるので、どちらかが苦手という人を連れて行っても大丈夫なところもいい。
この日は、昔よく一緒に仕事した人を交え、会社の連中と行くことになった。相手が何が好きだったか確認せずとも、ここなら何でもあるので安心である。とりあえず予算を伝えてコースを考えてもらう。海鮮も大好きということだったので、最初から海鮮のオンパレードである。
海ぶどうやもずくと一緒にいただくヒラメ。鯛の焼霜造り。ねっとりしたイカ。こういう三品が出てくるのに、ちゃんとお造り盛り合わせもやってくる。軽く炙った金目鯛、タコ、こちらも皮をパリッとさせたカツオ、マグロにトロ・・・なんとゴージャスな一皿だろう。アジの刺身もやってくるし、牡蠣もおでましになった。もう、海鮮好きにはたまらないこれでもか攻撃である。
そして。いくらの上に、大きく立派なぼたんえびを置き、その上にウニを載せた一品。これだけでもたいがい凄いのに、このあとはカニ酢である。シーズンを考えるとトレトレというわけにはいかないけれど、これだって立派なズワイガニだ。
この日は鱧しゃぶを用意してくれた。蛤で出汁をとった贅沢なお鍋である。もうおなかが海鮮でいっぱいになるという幸せな時間。しかも、その後にですよ、ステーキも出された。三切れとはいえ、これはこれでしっかりとボリュームがある。
最後にデザートのようなきれいな顔をして、焼き寿司がやってきた。どうです、このビジュアル。これはのどぐろ丸ごとを捌いて、鮨にして、皿に並べて焼いた一品。こちらの名物なんであるが、焼かれることによって酢飯とネタが不思議になじんで、酸味がまろやかになる。おなかパンパンなのに、これなら食べられるというのもいかにもデザートのようである。
この後、すぐに別の機会でまた伺った。こちらも、だいたい同じようなラインナップとなったが、女の子ばかりのグループだったので、全体に少なめでお願いし、焼き寿司も半身にしてもらい、かわりに茶そばのペペロンチーニ風というのをもらった。
面子によっていかようにも組み立ててもらえる(もちろん、自分でも組み立てられるが、シェフにゆだねたほうがダンゼンよい)創作キュイジーヌ。東京ばかり行かずに、家の近所にある店にも一度は顔を出してみたい。