千夜千食

第11夜   2014年1月吉日

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JALの機上「サロン」

今のところ最上の香りと味わい。
一年に一回しか飲めない名品だからこそ
頑張ってまた来年も、と願う。

写真[1]

 鮨と歌舞伎とシャンパンのために働いている。

 ひと昔前までシャンパンと言えば、バブル時代のドン・ペリニヨンは別として、モエ・エ・シャンドンとかポメリーとかヴーヴ・クリコくらいしか選択肢がなかったように記憶している。だけど、いつの頃からかヴィンテージと呼ばれるものや、見たことも聞いたこともない多種多彩なシャンパンが出回るようになってきた。この10年シャンパンも含めたスパークリング・ワインの輸入量はほぼ右肩上がりで増え続けているのだそうだ。日本のシャンパン輸入量のうち、プレステージ・シャンパン(メゾンの最高級品)の占める割合は2割近く。

 人口1人あたりのワイン消費量ではフランスの10分の1にも及ばないのに、プレステージ・シャンパンの占める割合は日本では異常に高いのだそうだ。これは欧米諸国には見られない現象らしいが、なんとなくわからんでもない。
 私はもちろん行かないが、クラブなどで飲まれる割合はそうとう多いと推察する。ウィスキーをボトル1本空けようと思うとそれなりに時間がかかるが、シャンパンは開けたら最後飲みきってしまうものである。店にとっては儲かるアイテムであり、客にとってもええカッコできる手っ取り早い酒なのである。その上、シャンパンは文句なしに旨い。酒場でのダンディなふるまいにこれほど合致した酒もないのではないかと思う。

 静かで根強いブーム定着のおかげで、シャンパンを置いているバーも増えているし、グラスでも気軽に飲めるようになってきた。ワインほど銘柄も多くないので、名前も覚えやすいし、価格設定も比較的リーズナブルである。ボトルで頼んだとしても、原価に対しそんな法外な掛け率でもないように思う。とはいえ、普段飲むのはもっぱら普及品。フレンチを特別な気分で食べに行くとき以外はボトルも、プレステージシャンパンもめったに頼まない。

しかし、だ。

 一カ所だけ高級シャンパンを好きなだけ飲み放題できる場所があるのだ。しかも「サロン」という名品を。

 さて、どこでしょう。

 答えは、JALニューヨーク線のファーストクラス。
 
 なんで私ごときがファーストに乗れるかという事情はおいおい説明するが、(というかアメックスのポイントを必死で貯めJALのマイレージに交換して片道だけでもアップグレードしてもらうという手口を使っている)ここで供されるシャンパンは、サロンとドン・ペリニヨンの2種類だ。今年はサロンは2002年という21世紀のファーストビンテージだった。で、私は徹頭徹尾、サロンを飲む。最初にファーストに(マイレージで)乗ったとき、あまりにサロンばかり飲むので最後にはテーブルにボトルを置いてくれたこともある。去年は夜食にカレーを頼むと、「まだ先ほどのサロンが残っております。お持ちしましょうか?」と客室乗務員が誘惑するので、なんとカレーを食べながらサロンを飲むという暴挙も経験済みだ。

 昔からあたりまえのようにファーストに乗っているやんごとなき人々であれば、こんな恥ずかしいことはしないだろう。私だって普通のシャンパンであれば、こんなにもがつがつはしない。だけど、サロンですもの。どうしようもない。

 毎年機上サロンを飲むために、せっせと食べてなんでもかんでもアメックスで払う。

 ところが、今年私の素行がJALにばれたのか(笑)、アメックスからポイントのマイレージ移行ができなくなってしまった。そのかわり、JALとアメックスの提携カードというのができたようである。

 アメックスをやめて、この提携カードに変えるかどうか悩んでいる。