千夜千食

第24夜   2014年1月吉日

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博多「ロイヤルボックス」

絶品と日本中から賞賛される
噂のフレンチトーストを深夜に食す。
こんなん癖になったら絶対にあかんわ。

 こちらは、博多中州を代表する名門クラブである。女ひとりでへらへら行くところではない。これには理由がある。

 松岡正剛師匠が折につけ、博多に凄い伝説のママがいて、じゃんけん名人だと言う。絶対に負けないと言う。ママとじゃんけんしたさにみんな通うと言う。その上、「中州通信」という博多発信の情報誌を30年近く発行し続けてきた人だと言う。今も中州でリンドバーグという航空スナックとロイヤルボックスというクラブを経営していると言う。師匠が凄いと太鼓判を押すのだから、そのママは確かに凄いのだろう。いつか会えるといいなと思っていた。

 ところがである。昨年6月にそのママと師匠のトークセッションが博多で行われることとなったのである。好機である。何が何でも行かなければならないのである。タイトルは「書物の誘惑、女の魅力」である。

 そしてその日、とうとう私はかぶりつきでママの話を聞いたのである。粋な着物姿に博多弁。もうすっかり魅了されたのである。その日師匠はトークの第二部がありそれが終了した後ママから電話があり、みんなでママの店「リンドバーク」にお邪魔して実際にママとじゃんけんをする機会に恵まれたのである。素人にしては頑張って持ちこたえた方ではあるらしい。だが、二度挑んで、あえなく敗北した。以来、博多に行く機会があるなら、絶対にもう一度ママに逢いに行こうという野望を抱いていた。

 その好機が訪れた。吉富寿しの後、迷わず中州に向かったのは言うまでもない。

写真[1]

 リンドバーグは正式には航空スタンドリンドバーグという。パイロットだった叔父上から受け継いだという店内は、飛行機の模型や木製のプロペラなどが飾られ、キャビンアテンダントの装いの女の子たちが迎えてくれる。が、この時間ママは隣のロイヤルボックスにいると言う。店の女の子になぜここに来たかを説明しながら、スコッチを飲んでいた。するとまもなくママから電話が入り、ロイヤルボックスの方においでと言う。女ひとりで行っても大丈夫ですかと訪ねると大丈夫だと言う。ならば行くまで。だが、さすがに中洲の有名クラブである。ボックス席は凄い活気である。が、左奥にカウンターがあるのでホッとする。シャンパンを飲みながらママを待つ。ついでに、リンドバーグの女の子たちが何度もフレンチトーストがとてもおいしいんですよ〜帝国ホテルのシェフもまいった味なんですよ〜一度食べてみて〜と何度も言っていたのを思い出し、カウンターのバーテンダーにその話をすると隣の厨房から出前できると言う。ならば、持って来てもらいましょう。ということで、噂のフレンチトーストを食したのである。

写真

 ふっくらと黄金色に輝くフレンチトースト。てっぺんにはパウダースノーのような粉砂糖がかかっている。ひと口食べて驚いた。しっとりと肌理の細かいなめらかさ。ほとんどプリンである。悪魔の味である。深夜というシチュエーションもその悪魔度を高めてくれたのである。いやあ、まいった。(ママには深夜にそんなもん食べたらいかんばいとお説教されました・・・)

追記

 ママ、ママと私が呼んでいるその人は藤堂和子ママという。日本一じゃんけんが強いことで知られているのはもちろんだが、私が注目するのは人を惹きつける力と人を見る目に並々ならぬ能力をお持ちであるというところである。同時に長年経営者としてたくさんの人を率いてこられたという点でも、卓越したリーダーシップが備わっている方でもある。できるものなら、半年くらいママのところで修行したいと思えるほどの吸引力なのである。もう大ファンである。考えてみれば博多に行くのと、東京に行くのとさほど時間は変わらないのだから、通いたいとは思うのだがなかなかままならない・・・・

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