千夜千食

第29夜   2014年2月吉日

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天皇バーの「おでん」

たかがおでんというヤツは
おでんに泣いて、おでんに復讐される〜
されど、されど、おでんなのだ。

 家の近所にある天皇バー。もう20年以上通っている。なんで天皇バーというのか。

それは、

じんむずいぜいあんねいいとくこうしょうこうあんこうれいこうげんかいかすじん・・・・・。

神武綏靖安寧懿徳孝昭孝安孝霊孝元開化崇神・・・はい、わかりますね。天皇初代からの諡名。これを最低でも10代以上入り口で言わないと入店できないというルールがあるからである。垂仁景行成務仲哀応神仁徳・・・いや、これは嘘(笑)。しかし、私はここのマスターによって、愛国思想に火をつけられ、古代史への飽くなき興味を持つようになったのである。天皇制という日本独特のシステムの意味を日々考えるようになったのである。もともと好きではあった。だが、この店によって、その好きが盤石の好きになったのである。

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 そのマスターが冬になるといろいろ仕込む。そのひとつがおでんなのである。定番は厚揚げ、こんにゃく、大根、玉子など。で、仕入れによってここに、和牛のすじ、豚足などが加わるのだ。最近はカマンベールチーズなどもある。このおでんが、またラガブーリンによく合うのである。おでんのキモといえるのがだしだと思うが、マスターのつくるだしは甘すぎず辛すぎず、薄すぎず濃ずぎない絶妙ともいえるバランスの上に成り立っている。私の気に入りは、玉子(これは外さない)、厚揚げ、大根(あるいはこんにゃく)、そしてすじというラインナップ。小腹がすいてきた夜12時頃。家に帰る前についついバーに上がる階段をトントントンと上がってしまう。まずはラガブーリン。そして、おでん。当然最後の汁までずずいとしっかり飲み干す。

 おでんを注文する客が少ないと、へんこのマスターはすぐに仕込むのをやめてしまうので、おでんのシーズン中常連は継続しておでんを味わうために、無理してでもおでんを食べるのである。

 おでんって、ほっとするよね。