千夜千食

第134夜   2014年10月吉日

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京都三条「ブランカ」

風情のある町家にして、出されるのは沖縄&アジアン料理。
このギャップが、いやはやなんともたまらない。
辺銀食堂出身の大将の店、旨くないわけがないのである。

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 東京での仕事帰りに、京都に立ち寄った。友人のガラスアーティストの個展をのぞくためである。ギャラリーの営業終了後、京都でごはんを食べる約束をしている。

 目指す店は御幸町三条。京都・三角屋の三浦さん推薦の店である。もともとの町家に匠の知恵と今風のセンスを加え使い勝手のよい店に改装して、そこに合う店子を探してきて貸すというスタイルでやっているのだそうだ。なるほどね。貸す側は店のイメージを保てるし、借りる方はイメージさえ合えばすぐに営業できる。双方にメリットがある方法である。こういうの、メイクセンスって言うんだろうね。

 肩の力の抜けたナチュラルさを感じる入り口である。なにしろ「カジュアルで旨い店ならここや」というお墨付きである。中はカウンターと手前にテーブル席。メニューを見ると、選ぶのに悩んでしまうくらいの充実度である。最近、おまかせばかりを食べているので(それはそれで悪くはないのだが)、たまには主体性を持ってその日その時間食べたいものを注文するというスタイルでやりたい。ここは、その欲望をかなえてくれそうな予感。

 事前にこちらの大将が、石垣島の辺銀食堂で料理を作っていたという情報も耳に入っている。辺銀食堂には行ったことがないが、ご存知のようにあの石垣島のラー油で一世を風靡した店である。料理もすこぶる旨いと聞いている。いやがうえにも、期待が高まるではないか。

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 今日は、食べるぞ〜。いや、いつも食べてはいるけどね。この手のスタイルの店だと、やっぱり気合が入る。それに今夜は三人だから、じゃんじゃん注文しても大丈夫であろう。まずは・・・生のピーナッツに銀杏。見てよ、このツヤツヤの質感。素材が生き生きしていると、それだけで嬉しくなってくる。ビールも進む。続いての春巻きもお野菜がぎっしり、みっしり。胡瓜と春雨、海老がつまったこのピチピチ具合。野菜や海からの贈り物をいただいているという実に有難い気持ちになるの。

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海老シュウマイも、もちもち、しこしこ。この色鮮やかなのは牛肉のサラダ。これにもたっぷりお野菜、そしていちじくまで入ってる。また、沖縄のスパイスがふんだんに入ったドレッシングが超絶技巧なの。白いのはパパイヤの茎のサラダ。パパイヤはベトナムに行ったときハマったけど、シャキシャキのみずみずしい食感がたまらない。こういうのを食べると、ホント全身が透明になっていくようなヘルシーな気分になれる。豚の唐揚げにも、炒めたお野菜がどん、と乗っている。タンパク質とお野菜というゴールデンコンビですな。グラタンのような白いのは、白菜とベーコンのクリーム煮。まったりやさしく、懐かしい味。黄ニラはくったりしながらも、噛むとシャキッと歯切れがよい。ジャージャー麺の甘辛いタレには独特の食感の麺がからんで、もう三人で取り合うようにして食べる。まだまだ、はいるぞ。で、シメは椎茸と豚肉のあんかけ焼きそば。全11品。ほとんど無言でガツガツ食べた。さほどに、旨い。

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 素材が生き生きしている。新鮮な素材を、手早く、ダンドリよく、チャーっと料理する。そこに香草と香辛料を効かせたソースやドレッシングが絶妙にからむ。沖縄や東南アジアのエスニックな気分と日本とが、腕利きの料理人の手にかかりうまい按配でちゃんぷるされている。

 京風町家で食す、めくるめく沖縄&アジアン料理。
 あっぱれである。