千夜千食

第34夜   2014年2月吉日

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猫の日の鮨「一柳」

本当は握りに自信があるというのだが
いつもたどりつけない・・・
ツマミの充実度に毎回唸らされる銀座鮨。

 2月22日は猫の日だ。にゃーにゃーにゃーと2が三つそろうのでそうなったらしい。

 二月花形歌舞伎・夜の部に息つく暇もないくらい熱中していたので、終演と同時におなかがグーグー鳴っている。にゃーの口になりながら、今年お初の「一柳」ののれんをくぐった。

 銀座で鮨といえば、私はここである。ほかにもいろいろ行っていた店はあるのだが、歌舞伎が終わった後でも対応してくれるのと、つまみのこれでもか攻撃と、大好きな三千盛があるのと、そして何より店主の心意気が好きで通いつめている。

 もともとは一度だけ行ったことのある銀座の店から、ホテル西洋銀座の中に新しい店を出したとの案内をもらい、おまけに店のプロデュースはあの海老さまによるものというふれこみにも釣られ訪れたのがきっかけだった。「真魚」というその店の名は、真の魚という文字通りの意味だけでなく、ご存知空海の幼名で、そのネーミングにまず惚れた。店内には海老さまの隈取りが飾られていたり、海老蔵襲名記念の海老紋入りバカラのグラスや麻でできたコースターなど、海老さまファンにはたまらない小道具でも満ちていた。

 遅い時間なら終演が九時半過ぎのときもある歌舞伎の後に、ゆっくり鮨が楽しめる隠れ家として、歌舞伎に行っている間ホテルのクロークで荷物を預かっていてくれるサービスも含めて、大のお気に入り店としてつねに歌舞伎とセットになっていた。

 その「真魚」がホテル西洋銀座クローズに伴い、閉店するという。ホテルの中にあるのだから、仕方のないこととはいえ、車寄せにいつも待機しているホテルスタッフや支配人とも親しくなり、居心地のいい空間を堪能していただけに、これからどうしようという戸惑いがあった。

 今日で終わりというその日、海老さまの公演もあり、終演後最後の「真魚」を訪れた。すでに、近所の銀座一丁目に新しい店を出すことは決まってはいたが、それでも慣れ親しんだ店がクローズするというのは切ないものである。最後の鮨を堪能し、三千盛をしこたま飲み、後ろ髪を引かれながら店を後にした。

 それから何ヶ月かして新たにオープンしたのが「一柳」である。店の場所と内装が少し変わったことをのぞけば、何も変わらない。

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 さて、名物つまみ攻撃だ。まずはのれそれ。つるつるっと爽やか。氷見のぶりのこの脂を見よ。わさびをたっぷり乗せそのままでいただく。ぷっくりと豊かな牡蠣は炙って。鳥貝も絶品の甘さ。この日は珍しくイカが出た。そしてヨコワ。蒸しアワビはいつ食べても安定した旨さ。こんな大きなサイズである。(つい大きさ比較で煙草の箱を追いてしまう)大好きな鱈の白子焼き。三千盛が進む。車海老。平ら貝も軽く炙って。海老のアタマがやってきた。ガリガリ丸ごと食べる。そして真打ち、鮟鱇の肝。流通がよくなったおかげで、ほぼ一年を通してあるのでアンキモ好きにはこたえられない。ひらめの縁側。ポン酢でいただく。本日の焼き魚は金目鯛。上品な脂がのっている。全14品。ああ、もうおなかぽんぽんかも。と言いながら、握りも少々。

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 まぐろ三連発。この日は撮り忘れてしまったが、赤身のづけ、中トロ、大トロのめくるめく競演。アジ、さより、ウニ、煮蛤も充実。そして絶対に欠かせない穴子は蒸しと焼きの両方を楽しむ。大満足である。毛づくろいしたくなるほどの心地である。

 にゃむ、にゃむ。