千夜千食

第43夜   2014年3月吉日

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銀座鮨「一柳」

2020年東京オリンピックに
出場したいという野望を大将から聞いた。
それって、いったいどういうこと?

写真[22]

 再び「一柳」である。今回は第11回松山倶楽部である。(第1夜参照)

 こちらの店主一柳さんにはひそかな野望がある。最初聞いたときとてもびっくりしてしまった。ええー?

 何だと思います?

 それは、オリンピック出場。

 いや、選手として出るのではない。鮨職人として出場するのである。最上級の野望はVIPのために鮨を握ること。それがかなわないなら、選手村でもかまわない。うーん。こんなことちょっと思いつかなかった。だけど、東京で飲食に携わっている人なら、かなわない夢ではないのかもしれない。聞けば、彼のお父上も帝国ホテル時代、前の東京オリンピックに出場したのだそうだ。そういうことであればその野望も野望ではなくなるし、彼が本当にオリンピックで鮨を握ることができれば、親子二代で東京オリンピックの料理人が生まれるということでもある。2020年の時点で彼は働き盛りというか、鮨職人としてはいい脂が乗りまくった大トロ状態であろう。

 あたりまえのことだけど、たしかに出場するだけがオリンピックではないのだ。そもそも企画立案から誘致にいたるまでの運動に関わった人、これからの建築に携わる人、サービスやセキュリティを担当する人などなど、オリンピック開催にいたるまでにどれだけ多くの人がそこに向けて尽力するか。いかん、ちょっと想像力が欠けていたと気づかされる。一柳さんは、どこにどうして働きかければ実現するのかはわからないけど、こうして握りたいといろんな人に言い続ければ、縁あって近づくことができるかもしれないと思っているのだそうだ。

 てなわけもあり、だけど鮨屋としても一度紹介したかったので、友人をここに連れてきた。オリンピックに近づけるかどうかはわからないが、いろんな人に紹介しておけば可能性がないわけではない。ま、こういうのは本当にご縁。一柳さんに運があればご縁はきっとつながるでしょ。

 それにしても、つくづく思うのは、美味しいものを食べ歩く相棒の条件はただひとつ。好き嫌いがなく、何でも美味しく食べられること。当たり前といえば、当たり前のことなのだが、今や好き嫌いがまったくないという人は貴重な存在なのである。そして酒もいけるとモアベター。このふたつを兼ね備えているのが松山倶楽部の相棒である。行けない店がない。最強なのである。さて、ここのツマミはどうだろう。

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 まずはのれそれ。たっぷりの酢味噌でいただく。イカった鯛のこりこりしたところは、昆布で締められている。軽く漬け込んだホタルイカは、三千盛の辛さと絶妙なコンビネーションだ。さっと炙ったのどぐろの脂をおろしポン酢で中和させる。それでも脂がじんわり。大ぶりの牡蠣はレモンを絞ってつるりと飲み込む。口中にこっくりと海のミルクが広がっていく。たこの柔らか煮も相変わらずの丁寧な仕事がしてあって、むにゅりと柔らかい。たいらぎは、シコシコ。そして、こんがり焼いたフグ白子!今や禁断のとらふぐは下関で毒を持つ内蔵部分をしっかり除去され築地にやってくるのだ。その香ばしさととろけ具合と言ったら!お次ぎは馬糞雲丹。甘い。そして、そして、待ってました鮟鱇の肝。ああ悪魔の味だ。軽くシメた鯖の旨さは、どう表現したらいいのだろうね。毛蟹は大胆に甲羅を半分ごっこ。全12品。ほとんどものも言わず、黙って淡々と食す。ときおり、「旨い」とか「馬鹿馬〜」くらいしか交わさないのであるが、それはお互いじゅうぶんに満足しているということでもある。

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 それにしても、大将、このたたみかけるようなツマミ攻撃ってまさしくオリンピック級だよ。

 と、言いながらも、鮨も9カン食べた・・・