経堂の「美登利寿司」
ゴルゴンゾーラとあん肝の
ただならぬ関係に腰が抜けそうになったわ。
小田急沿線で愛されている寿司。
松岡師匠のおわします豪徳寺での「蘭座」イベントが終わり、ちょっと小腹も空いているという時間。回會メンバーも集合していたので、もう一名着物姿の姐さんも誘い、軽く食事に行くことに。若旦那が、前々から経堂にええ感じの鮨があると言っていたのを思い出し、「そこ連れてけ」とお願いしてみた。
鮨って、こんな軽く食べたいというシチュエーションのときにも便利な食べ物。それは江戸ではもともとファストフードだったという出自からしても明らかで、自分の意志で食べる量を調整できるというのが素晴らしい。
経堂の駅前までタクシーで移動する。こんなことでもない限り、経堂なんて来るチャンスはなかったかもしれない(笑)。めざす店は、駅前のロータリーの真向かいにある。入り口は狭いのだが、一階と二階があって、かなり広い店である。一階のカウンターに四人並んで落ち着いたところで、ビールで乾杯。
最初のツマミを食べて、びっくりしたのは、「このあん肝、ゴルゴンゾーラの味がする」という事実。そうなのである。大将特製のあん肝は、ゴルゴンゾーラを混ぜ込んであるスペシャルな味。強烈とも言えるゴルゴンゾーラの個性的な香りと、まったりとろけるあん肝との相性は、意外に悪くない。たまらず日本酒を注文。これをちびちび舐めながら、日本酒を少しずつ。続いて出されたのは、昆布にはさまれた鯖。いわゆる〆鯖よりももっと主張する味わいで、これも大将の手によってどうにかされている感じ。松前昆布の味付けも、濃い目。初めて食べる個性的な味である。三品目に出たのは茶碗蒸し。こちらは卵だけのシンプルタイプかと思いきや、このわたのたれがかかっている。このわたも、もちろん大好物である。たった三品のツマミを食しただけで、この店がかなりオリジナリティにこだわっているということが見て取れる。こういう創意工夫、大好物である。
本来であれば日本酒を飲みながらもっとツマミをいただきたいところであるが、時間も時間。今日は軽めのお約束。そろそろ握ってもらいましょう。
最初はとり貝。これを最初に持ってくるところが、大将の気合か?シャキシャキしていて食べ応えがある。マグロのズケもしっかりした存在感のあるお味。イカは細かく刻まれており、口の中でふわっといい具合。コハダの酢もコクがある。そしてツマミでも出された昆布〆。脂の乗り方が尋常ではない。続いてカスゴ。春子と書いてカスゴと読むのだが、これ関西ではあまりなじみのないネタである。鯛の稚魚であるらしく、文字通り今が旬。軽く酢で〆てある。関西ではむしろ小鯛の押し鮨とか雀鮨などでおなじみかもしれない。そしてこっくり味の濃い馬糞雲丹。新鮮なアジ。このへんでそろそろおなかがいっぱいになってきたので、もう一回だけ昆布〆を所望する。これ、けっこう癖になる味。最後は、やっぱり穴子。こちらのはとろとろの煮穴子で、口のなかでふわりほどけて溶けていった。
ひとつひとつにしっかりと存在感のある鮨。聞けば創業は昭和2年というから、老舗である。昔からずっと、ここ経堂で愛されてきた店であることは間違いないだろう。東京は関西に比べると巨大な広さだから、さまざまな沿線の駅ひとつひとつにこういった昔から愛されてきた店があろうことは想像に難くない。
さて、適度な満腹状態というのは、酒を呼びこむ。せっかくなので(何が?)白金に移動してもう少し飲もうぜ、ということになり、お気に入りモレスクに出向いた。そして、あろうことか、ウィスキー飲みながら本当のシメのシメに、雑穀米のカレーを食してしまう。もちろん、ひとり一人前ではなく、4人で分けたひと口カレーではあったが。これはこれでたまらない美味であった。