千夜千食

第64夜   2014年4月吉日

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麗しの「朝ごはん」

イースターには卵を食べるんですってよ。
という、友人のFacebookを見て、つい頼んでしまった。
久しぶりに食べるエッグベネディクト。

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 エッグベネディクト。初めて食したのは大昔のニューヨークでである。まだ、The Plazaが健在だった頃、ここのダイニングルームにブランチを食べに来て発見した。エッグベネディクト?メニューの下に書いてある文章から読み取れるのは、ポーチドエッグであることと、オランデーズソースがかかっていること。それくらいであった。が、卵好きである。どんなもんだか注文してみた。

 そして・・・やられちまった。トーストしたイングリッシュマフィンの上にバターとハム、さらにその上に中が半熟のポーチドエッグ、そしてオランデーズソースがたっぷりかかっており、これがダブルで皿の上に乗っているのである。なんと豪勢なものをアメリカ人って食べるのかしら。もちろんThe Plazaのそれは値段もそうとうに豪勢だったように記憶している。

 以来、The Pierre、The Carlyle、St Regisなどなどニューヨークのコンサバティブ系ゴージャスホテルの朝食を食べに行くのにハマっていた時期がある。豪勢なお値段といっても、そこは朝食。ランチやディナーに比べれば、じゅうぶん手が届く。どのホテルもそれぞれに美味しかったし、ホテルによってバリエーションも多彩だった。ハムの代わりにベーコンというのもあるし、ある日メニューにエッグフロレンティーンというのが並んでいるのも発見した。これはほうれん草が入っている。サーモンベネディクトというのもある。ハムではなくスモークサーモンを使う。かように、エッグベネディクト兄弟はいろんな顔を持っている。

 友人のミサコがフェイスブックで「イースターには卵を食べるのよ」などと発言しているのを見た直後に、むらむらと卵への欲望がアタマをもたげてきた。ちょうど、完全オフでちょっとお気に入りのホテルに泊まっていたので、さっそくルームサービスメニューをめくる。あった!エッグベネディクト!これよ、これ。今日の気分は!早速電話する。

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 やがてうやうやしくワゴンに乗せられ部屋にやって来たエッグベネディクトは、ほうれん草のソテーとスモークサーモンの上にポーチドエッグが乗っているというゴージャスさ。私は断然ハムよりスモークサーモン派。それにほうれん草が入っているというだけで、なんだかちょっとヘルシーな気分にもなってくる。しかも、オランデーズソースは自分で量を調整できるよう小さなうつわに入っている。調整できるとはいえ、結局黄身たっぷりのオランデーズソースは全部かけられてしまう運命にはあるのだけれど。このレモンの酸味がたまらないの。マヨネーズよりも高級バージョンって感じがする。だってサラダオイルの代わりにバターたっぷりだからね。

 さて、エッグベネディクトの美しい食べ方である。美しくは食べたいが、やはり卵を食べていることを改めて目でも楽しみたいので、ひとつは大胆にポーチドエッグを半分に切る。黄身がとろ〜り流れだしオランデーズソースと混じり合う。これをですね、台のマフィンとほうれん草、サーモンと一緒にタテにフォークで串刺しておもむろに、おもむろに、口に運ぶ。皿に流れている黄身とソースは、マフィンできれいに拭う。そうしてひとつめを完食した後、もう片方の卵にとりかかる。ポーチドエッグまるごとまるのままで口に入れたくなる衝動をかろうじて押しとどめなから、あれこれと逡巡したあげく、結局はまたナイフで半分に切る。黄身がとろ〜り流れだしオランデーズソースと混じり合う。やはり、エッグベネディクトの食べ方はこれでいいのだ。これが正解なのである。これ以外にはない。

 そういえば、ニューヨークで長い間、朝ごはんを食べていない。日本では、かのクリントンストリートのパンケーキに行列ができているし、ベーグルショップも流行っている。今年の年末、久しぶりに本場のパンケーキやベーグル(ロックスが大好物!)そしてエッグベネディクトを食べたくなってきた。

 その場合、昼は抜きにしておかないと恐ろしいカロリーになるので、朝を取るか昼を取るかでけっこう悩むところである。ま、今悩んでもしょうがない。行ってから、悩むとするか。