千夜千食

第141夜   2014年11月吉日

  • icon_14px
  • icon_14px
  • icon_14px
  • icon_14px

唐津「銀すし」@西麻布

唐津まではよう行かんが、東京都内なら余裕で行ける。
そんなお客のために、うつわとネタをひっさげて
銀ちゃんが西麻布に出稼ぎにやってきた。

 すっかり魅了された唐津の銀すし(第26夜)ではあるが、唐津はそうおいそれと気軽に行ける場所ではない。銀ちゃんところで食べようと思うと、金曜夜に博多入りし翌朝移動して昼にするか、土曜に博多経由でダイレクトに行って夜の鮨を楽しむか。いずれにしても、博多か唐津で一泊しないといけない。もちろん、唐津には魅惑的な窯がいっぱいあるので、どうせいくなら泊まりがけで楽しみたいとは思う。が、なかなか機会が見いだせない。

 ところがである。運よく西麻布で出張鮨をやるとの連絡をもらった。1月に唐津の店に行ったとき、隣に座っていた人が偶然にもこの西麻布の店のオーナーであった(実際に店を切り盛りしているのは娘婿にあたる方であるが)。そんな縁も手伝って、銀ちゃんの鮨を味わいに出かけた。昼、夜同じ内容だというので、昼を予約した。

th_IMG_1163

 めざす店は西麻布交差点から少し入ったビルの二階。カウンターのある洒落たワインバーである。西麻布感満載である。ほんまにここで鮨が食べられるの?と思いながら、カウンターの中を見るとズラリと名酒が並んでいるではないか。よし。そうこうしているうちに、一斉スタートである。銀ちゃんが出てきて、挨拶してくれる。その瞬間に、西麻布のおしゃれな空間が、唐津の銀すしになる。

th_IMG_1161th_IMG_1167th_IMG_1170th_IMG_1171th_IMG_1173th_IMG_1175th_IMG_1177th_IMG_1179th_IMG_1180th_IMG_1181th_IMG_1182th_IMG_1185th_IMG_1186th_IMG_1187th_IMG_1188th_IMG_1189

 最初にすっと出されたのは、唐津の牡蠣。まだ小ぶりであるが、海の滋味をたっぷり含んでしみじみ深い味。もちろん唐津からネタと一緒にやってきた中里隆のうつわに盛られている。ワインバーなので、最初の一杯こそシャンパンをいただいたが、すぐに日本酒をお願いした。マスターのおすすめは角右衛門。秋田の特別純米は馥郁とした旨酒である。片口も盃も中里隆。思わずにんまりとする。鮨は、あこう、ハリイカ、マグロ赤身と続いて、今度は伊勢の寒紅梅をいただく。うーん、これも美味。海老の握りの後は、おひたしをいただいて、こういう鮨と一品のかわるがわるは楽しいねえ。ぐびぐび酒が進んで、今度は松の司。ふっふ。五島列島の鯖を軽く〆たのは、何とも言えない脂の乗りかた。口福である。大トロも、ほっほ、とろとろである。軽く炙ったのどぐろもたまりませんな。コハダ、ぶりと来て、再びあこう、ハリイカ。あら、リピートしてる。美味しいからいいか。

th_IMG_1190th_IMG_1191th_IMG_1196th_IMG_1198th_IMG_1201th_IMG_1202th_IMG_1204th_IMG_1205

 中休みで小さな茶碗蒸し。のどぐろの炙り、コハダ。こっちもリピートしてるんだけど、いいよ、許すよ、美味しいから。でもって、穴子は立派。お口の中でふわりとほどけます。そうこうしていると、カッパ巻きと赤出しが出され、ええ〜もう終わりなの〜と文句を言うと、銀ちゃん苦笑い。サービスで中トロを出してくれました。

 はるばる唐津から、仕入れたネタと中里隆のうつわを携えて東京までやってくるのである。自分の店じゃないから勝手も違うし、唐津の店と同じ条件ではないだろう。それでも、あの、銀ちゃん独特のまったりとして、口のなかでほろりほどける鮨は健在である。もちろん、握っているのは同一人物だからね、当たり前だけど。