千夜千食

第142夜   2014年11月吉日

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西麻布の秘密倶楽部「案庵」

ここはエクスクルーシブな会員制密談サロンであります。
オーナーは、経営者のかかりつけ医の異名をとるあの女帝。
そうは見えないすっごくチャーミングな人なんだけど。

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 「案庵」では夜な夜な秘密の会合が開かれているらしい。

 企業経営者や幹部の方々だけでなく、IT起業家や経営コンサルタントはもちろん、ミシュランシェフに、政治家やトップアスリートの方々まで、綺羅星のような面々がさまざまな情報を交わし、次なるビジネスの芽を探したり、コラボレーションのきっかけが生まれたりする。そういう場なのである。

 オーナーは岡島悦子さんという女性である。凄腕で、人と人をつなぐ天性の技を持ち、あまたの経営者から頼りにされている。女帝と呼ばれているとも聞いたことがある。そういう冠だけで想像すると頭脳切れまくりのちょっとコワめの女性をイメージするのだが、実際はほわんと柔らかな雰囲気でとても可愛らしい人なのである。キュートな観音様という感じか。観音様であるから、当然人たらしである。いつもにこにこ微笑みを絶やさないし、気遣いも半端ではない。だけどそれがけっしてお仕着せがましくない。だから、きっとみんなやられるのだろうなと思う。私もやられた一人である。

 彼女とは松岡正剛師匠のハイパーコーポレートユニバーシティという企業塾でご一緒したのが縁で、仲良くさせていただいている。幹事をされているので、何かとお世話にもなっている。そのうえ、「案庵」の名付け親は松岡正剛師匠なのである。おまけにハイパー塾での合宿の夜、枕を並べながら、私が第二夫人(いちおう年の功で)で岡島さんが第三夫人ということにしてもらおうとお馬鹿な妄想をした仲である。しかも翌朝よく考えて、「やっぱり私が第三夫人で岡島さんが第四夫人、第二夫人はもう少し若い人が入れるよう空けておこう」などと勝手なことを取り決め、それを師匠に報告すると「おまえたちが第三と第四にいたら、誰もおそろしくて入って来られないよ」と実に名誉なお言葉までいただいている。ハイパー塾が続く限り、私も頑張って留年し続けようと思っているので、岡島さんが幹事をされているのはとても心強いのである。

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 さて、11月のとある夜。「案庵」に名付け親である松岡師匠をお招きするという会が催された。自称第三夫人としてお声がかかったのは、何ともうれしい限りである。サロンの壁には師匠が揮毫された「案庵」という筆文字が額装されている。案という文字の中には「女」という文字があり、その部分にだけ上から朱がなぞられているのが何とも粋な師匠のはからいであるし、ANANというアルファベットも書かれている。まことに、岡島さんの場にふさわしい。

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 食事はフィンガーフード中心で、ちゃんとブラックタイを着た男性がサーブしてくれる。飲み物は泡が気前よくばんばんと抜かれる。こういう場をしつらえるのが岡島さんならではというか、実にこなれたもてなしかたである。しかも、スペシャルケータリングにプラスして岡島さんお手製のおでんが用意されている。日々忙しくされているだろうに、こういうひと手間をプラスするというのが、さすがに「案庵」の女主人の面目躍如である。仕事においても、人との関係づくりにおいても、自らの労を惜しまないのが大切ということを身を持って教えてくれる。

 この日の会には「案庵密夜」というタイトルがついていたので、杏の餡蜜を手土産にした。「杏餡蜜や」というシャレであるが、さすがに岡島さんはそれに気づいて喜んでくれた。